疫学:顎関節部の疼痛、開閉口時のクリック音、咀嚼筋の疼痛、側頭筋痛、開口制限などの顎運動障害を呈する病態。
原因:不明。精神的ストレスによる食いしばり、歯ぎしり、外傷など。
一般的な治療法:噛み合わせの調整、マウスピースの装着など。
当院の治療法:顎関節症は、病院では根本的な治療がないようです。当院では最も治療成績が良い病態の1つです。主な症状は歯を強く食いしばることによる側頭筋の痛み、顎の痛み、開口時のクリック音、開口障害などですが、副次的な症状として手足の冷え、イライラ、不眠、自律神経失調、耳閉感、眼瞼痙攣、偏頭痛、耳鳴り、ベル麻痺、ラムゼイハント症候群などもよくみられます。ある病院での実験によれば、食いしばりや歯ぎしりが常態化した患者は、サーモグラフィ画像で全身の状態を観察すると、手足の体温が低下していることがよくあるそうです。これはつまり、食いしばりや歯ぎしりによって交感神経が優位になり、末梢血管が収縮したことに原因があると推察されますが、これらが常態化すれば、手足の毛細血管が減少したり、慢性的な血液循環不全が起こり、手足の冷えだけでなく、手足の肌荒れ、爪の異常、汗疱(異汗性湿疹、主婦湿疹)、感染(蜂窩織炎)、そして原因不明の全身の疼痛(線維筋痛症)、交感神経異常による全身の掻痒感やしびれ、発汗異常、睡眠障害、自律神経失調症などが起こりやすくなります。また、食いしばりや歯ぎしりの自覚症状がなくても、日常的に精神的ストレスが強く、脳の過緊張によって交感神経が常時優位になっていれば、顎関節周囲が血流不全となり、様々な症状が現れる可能性があります。したがって、歯ぎしりや食いしばりが常態化した患者においては、以上のような症状は、薬物治療、局所的な治療、対症療法的な治療で完治することは難しく、当院のような刺鍼法によって、顎の治療を最優先しない限り、進展がみられないことがよくあります。基本的に顎関節症は、過去または現在の精神的ストレスなどにより、無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりが頻発し、咀嚼筋が異常収縮を起こし、顎関節の間隙が狭くなることに起因していると推察されます。他の変形性関節症などと同様に、関節に付着している筋肉が慢性的な異常収縮を起こすことで、関節間隙が減少し、関節部での摩擦係数が上昇し、炎症が常態化し、骨棘や関節部周囲の変性を促すのであろうと推察されます。したがって、多くの関節の異常は、その関節部に付着し、硬化または癒着している筋肉をゆるめ、関節部に対する筋肉の張力を減らし、顎関節周囲の全体的な減圧を行うことが根本的な解決になります。当院では、軽症の顎関節症の場合は、咀嚼筋に刺鍼するだけで完治させることが可能です。しかし重症の場合は、一時的に完治したかのように見えても、再発することがままあります。特に、日常的な精神的ストレスが過剰であったり、過去にトラウマになるほど嫌な経験をしていた場合、年を経ても、睡眠時のように潜在意識が解放された時、嫌な経験が夢の中で幾度もフラッシュバックする可能性があります。このような状況下においては、食いしばりや歯ぎしりが往々にして発現し、睡眠の質が低下するばかりか、咀嚼筋周囲の緊張が一向に減りません。加えて、覚醒時のストレスも強ければ、寝ても覚めても食いしばっているような状態が続くわけで、筋肉も自律神経も休まるヒマがなく、鍼治療で一時的にコリが解消されても、すぐにコリが戻ってしまい、顎関節症の症状が完全に消失しません。現状では、過去の記憶を消去する術はありませんから、今現在の精神的ストレスが強度であるならば、根本的には環境を変えることが顎関節症を完治させる唯一の方法となり得ます。しかしながら、実際には、現在の生活環境を変えることは容易ではない患者ほとんどでしょうから、とにかくは定期的に咀嚼筋へ刺鍼し、コリがたまらないようにすることが最善策であると考えられます。目安としては、当初は週1回のペースで刺鍼し、ある程度症状が消えたら、たまに刺鍼する、という感じが良いようです。また、首肩背のコリが常態化しているような場合は、顎への施術と同時並行で、伏臥位での上半身への施術が必要になります。ちなみに、側頭筋が萎縮すると偏頭痛や開口障害、クリック音が見られ、翼突筋が萎縮すると下顎が患側または前方に偏位し、顎が側方または前方にズレたような感覚が見られます。患部となりやすい外側翼突筋や咬筋、側頭筋へ、つばめ式刺鍼法を用いて刺鍼することで、抜針直後に顎の位置がすぐに修正されたり、顎関節症が完治するケースは珍しくありません。外側翼突筋と咬筋への刺鍼は重要です。特に、外側翼突筋は触診困難な部位で癒着、機能亢進しているケースが多く、現状では、当院のような刺鍼法以外では、改善は難しいと思われます。当院では、多くの臨床経験から、外側翼突筋の重要性について気が付いたわけですが、実際に、歯科医の研究者にも外側翼突筋の重要性について指摘している方がいるようです。外側翼突筋の重要性については、旧東京医科歯科大学のこちらのページが参考になります。
疫学:顔面皮膚感覚の異常、口腔鼻腔粘膜感覚の異常、咀嚼筋麻痺、味覚障害などが見られる。第1枝の障害は前頭部に、第2枝の障害は頬部に、第3枝の障害は下顎部に出る。しかし、脊髄(延髄)空洞症や延髄外側病変(ワレンベルグ症候群など)においては、痛覚温度覚のみが障害される解離性感覚障害型を示すことがある。三叉神経痛の場合は、主に第2、第3枝領域において、数秒の激烈な痛みが発生する。
原因:鼻腔内や頭蓋底などの腫瘍、動脈瘤、帯状疱疹、膠原病など。三叉神経痛の場合は三叉神経根部の小血管圧迫による神経血管説が有力。心因性も少なくないとされる。
注意点:動脈瘤や腫瘍による圧迫との鑑別が必要。
一般的な治療法:薬物による対症療法。三叉神経痛の場合は薬物投与以外に、三叉神経から圧迫血管を分離させる手術(ジャネッタ法)が行われることがある。
当院の治療法:基本的には顎関節症の治療と同様、咀嚼筋への刺鍼と、頸部への刺鍼が中心となります。腫瘍など器質的病変が見られない場合は、数回の施術で容易に完治するケースが多いです。器質的病変が見られない三叉神経障害の主な原因は、三叉神経周囲の筋肉のコリ、またはうっ血と推察され、実際に、刺鍼で血流が改善すると症状が消失します。ちなみに、これまで顔面痙攣も原因不明とされていましたが、顔面神経起始部の血管による神経の圧迫が原因となっていることがわかり、手術によっても治癒する例が見られるようになっているようです。
疫学:末梢性麻痺と中枢性麻痺に分類される。原因不明の特発性麻痺はベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)と呼ばれる。顔面麻痺の多くはベル麻痺で、急性、一側性、全表情筋の麻痺が主徴で、同側の味覚障害、涙腺分泌障害、聴覚障害を伴うことがある。ヘルペスウイルスが原因の場合、耳鳴り、難聴、めまいを伴うことがある。予後は良好だが、麻痺の残存、再発などもある。
原因:寒冷暴露(寒冷刺激)、外傷、新生物、感染症(中耳炎、乳様突起炎、脳炎、髄膜炎、骨髄炎、帯状疱疹など)、肉芽腫(サルコイドーシスなど)、血管障害(多発性動脈炎、糖尿病など)、ギラン・バレー症候群、ラムゼイ・ハント症候群など。単純ヘルペス活性化説や顔面神経循環障害説、顔面神経管内浮腫説などもある。多くの場合、原因不明。
注意点:麻痺が両側同時に発症する場合は、ギラン・バレー症候群の疑いがある。また、脳血管障害による中枢性麻痺の場合は、前頭筋が侵されない。さらに、笑った時だけ麻痺が出る場合は、対側側頭葉損傷の可能性がある。脳卒中など脳血管障害との鑑別が重要。
一般的な治療法:軽度のベル麻痺は循環改善薬、ビタミン剤などの内服治療、重度の場合はステロイド大量療法。ラムゼイ・ハント症候群は抗ウイルス薬を併用する。表情筋のマッサージ、顔面神経減圧術など。
当院の治療法:器質的病変の見られない神経障害の多くは、筋肉のコリによる圧迫や、コリに付随する血行障害、循環障害、うっ血などが原因と考えられます。このようなケースは、医学的は原因不明とされることがほとんどですが、最近ではうっ血によって神経根が圧迫される病態も認知されてきているようです。顔面麻痺を発症する患者は、精神的・肉体的ストレスによって、頸部および顔面部の筋肉に慢性的なコリを抱えているケースが多く、その血行障害が神経根や神経周囲に及ぶと、突発的な麻痺を生ずるようです。したがって、コリを感じている時点で鍼治療をしておけば、顔面麻痺は予防することが可能であると推察されますし、発症してしまった場合は、病院での適切な処置と同時並行で刺鍼しておくと、治癒率も良いです。病院のみで処置し、医師に完治したと宣告されても、顔面部に麻痺が残ってしまうケースがあります。この場合、刺鍼することで改善することもありますが、発症からかなりの時間が経過し、神経が誤って再生されてしまった麻痺は、現状では治すことが出来ません。
美容鍼に関しては、こちらをご参照ください。