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逆子に対する灸法について

 
棒灸の症状別施術法はこちら→家庭で出来る灸療法
 
*基本的に、当院では逆子に対する灸法は行っていません。なぜなら、方法が簡単で、素人が自宅でやっても十分な効果が見られるからです。当院長は、院内ではなるべく難治な患者様を優先して施術したいと考えています。
 
中国では灸を用いた逆子治療が、1000年以上前から行われているそうです。実際に、8世紀頃に記された『太平圣惠方』には、棒灸を利用した逆子の治療法が紹介されています。棒灸を用いた逆子治療は妊婦への負担が少なく、経済的で、効果が良いため、現在でも中国では盛んに行われているようです。方法はとても簡単です。至陰というツボを10分ほど温めるだけです。

中医理論では、至陰穴は足の太陽膀胱経に属する井穴(jingxue)と呼ばれています。井穴は、脈気が最も浅く流れている所であるとされ、湧水が井戸に湧き出す様子にたとえ、井穴と名付けられました。井穴は十二経絡すべてに1つずつ備わっており、至陰穴はそのうちの1つです。
 
至陰穴が属す足の太陽膀胱経は、足の少陰腎経の経気と通じています。足の太陽膀胱経は、申の時間にあたる15~17時頃に、経気の流れが最も盛んになるとされています。足の太陽膀胱経と連絡する足の少陰腎経は、先天の本である腎、骨盤腔内を循行します。
 
そのため、棒灸で至陰穴に熱を加えることで、足の太陽膀胱経を介して、足の少陰腎経、子宮に刺激を与えることができると考えられてきました。現代医学的な観点から考察すれば、至陰穴には仙骨神経叢に由来する腓骨神経や腓腹神経から分岐した神経が分布しており、それら末端の神経を刺激することで、陰部神経や子宮平滑筋に間接的な影響を与え、胎位不正を矯正することが可能になっているのではないかと考えられます。中国では、逆子の灸は妊娠7~8か月での成功率が最も高く、約95%程度の妊婦が逆子の矯正に成功していると言われています。
 

逆子に対する灸のやり方


至陰穴だけを刺激する方法でも効果はありますが、可能であれば至陰穴から跗陽穴まで温めると良いでしょう。ツボの位置が正確にわからなくても、図を参考にして小指の爪の外側から、外踝(外くるぶし)の上、10cm程度の高さまで温めれば良いです。両足行います。温和灸と呼ばれる間接灸法で、棒灸の輻射熱を利用して温めます。直接灸法のように皮膚を火傷させる必要はありません。必ず、心地よい暖かさを感じる程度で止めます。
 
足の太陽膀胱経の経気が最も旺盛になる、15~17時くらいに行うのが最良です。妊婦自身で施術することも可能ですが、他人にやってもらう方がリラックスできるため、成功率が上がるかもしれません。妊婦は施術前にトイレを済ませておき、腰ひもをゆるめ、靴下を脱いでから、ベッドなど、静かな場所に仰向けになります。全身の力を抜き、ゆっくりと呼吸しながら、リラックスします。そして両目を閉じ、胎児が動いてくれるようイメージします。
 
まず、準備した道具をステンレストレーの上に載せます。こうすることで、床やベッドなどに火の粉が落ちることを予防します。長筒タイプの空き缶は予め灰で棒灸が埋まるくらいの高さまで満たしておきます。施術者はアルコールランプかガスコンロなどを用い、棒灸に火をつけます。無煙タイプの棒灸はもぐさを炭化させてあるため、木炭と同様、火がつきにくいです。初回使用時は5分程度火であぶる必要があります。有孔タイプは火がつきやすいですが、折れやすいので気を付けましょう。
 
棒灸に火をつけたら、右手に軍手を装着して、ペンを持つように棒灸をつかみます。そして、至陰穴から跗陽穴までの範囲を、妊婦の呼吸に合わせ、優しく温めます。棒灸は皮膚から3~5cmほど離し、熱感を加えつつも、火傷させない距離を定め、保つようにします。皮膚の上に灰が落ちないように、足側面から上下に平行移動させて温めます。例えば、術者は右手に棒灸を持ち、左手を妊婦の皮膚の近くに添えて、熱感を確かめながら棒灸を移動させるのが良いでしょう。
 
ほんのりと紅くなるくらいまで温めますが、温めすぎると火傷することがありますので、片足10~15分を限度に温めましょう。毎日1回行い、施灸したあとは、必ず病院で胎位が正常化しているかを確認します。胎位が正常化していたら、施灸は即中止します。最適な施灸時間や刺激量は妊婦によって異なりますから、素人による施灸が心配な場合は、信頼できる鍼灸師に頼みましょう。中国では一般的に、3~5回の施術で、胎位が正常化するようです。
 
*無煙棒灸の場合、点火部分は800度くらいになることがあります。使用後は水で消火するのがベストですが、翌日再利用する場合は、灰を利用して消火します。点火部分が灰の中に埋もれるまで棒灸を入れ、空気を遮断し、完全に消火されたことを確認しましょう。
*妊婦の体調が優れない時や、血圧に異常がある時、疲労時、空腹時は避けて施灸しましょう。
*灸法については家庭でできる灸療法をご参照下さい。
 

用意しておくもの
□棒灸(無煙タイプ) □アルコールランプまたはガスコンロ □燃料用アルコール(ガスコンロを使う場合は不要) □ライター(ガスコンロを使う場合は不要) □軍手(不燃タイプが望ましい) □ステンレストレー(11号程度の浅型ケーキバットでも良い) □大き目の灰皿 □消火用の灰(仏壇用で代用可) □消火用の灰を入れる筒型アルミ缶 □消火用の水と小バケツ(灰で消火する場合は不要) □タイマーまたは時計
*棒灸、アルコールランプ、燃料用アルコール、ステンレストレー以外は100均で購入可。