疫学:多くは単純ヘルペスウイルスの再感染で起こる。黄白色、円形、2~5mm程度の浅い潰瘍で、痛みやよだれの増加などを伴い、しばしば再発を繰り返す。通常、数日程度で痕が残らずに完治する。舌や唇、頬粘膜、歯茎、扁桃腺付近に発生する。
原因:過労、ストレス、睡眠不足、免疫力の低下、ビタミン不足、胃腸障害、口腔内を噛んだ時などに発症する。
注意点:症状が10日以上続く場合、発熱や下痢などの全身症状を伴う場合、1か所に沢山発生する場合、患部が痛まない場合、6mm以上ある場合、形がいびつな場合、硬いシコリがある場合などは病院を受診した方が良いかもしれない。口腔がんやベーチェット病、白血病などとの鑑別が必要。
一般的な治療法:うがい薬の使用や軟膏(ケナログなど)の塗布。
当院の治療法:単純ヘルペスウイルスの自然宿主はヒトで、一般的には1~5歳頃に初感染し、多くの場合、症状の出ない不顕性感染で終わります。しかし、1度体内に侵入したウイルスは知覚神経節に潜伏し、宿主の体の条件が悪化(免疫力の低下など)すると再活性化し、再発性病変を引き起こします。免疫細胞の70%程度は腸内に存在するため、腸内環境を整えることが免疫力維持の重要なポイントになりますが、腸内環境は腰部周辺の筋肉の状態も影響します。つまり、小腸を支配している腰部の自律神経節周辺の筋肉にコリがたまると、自律神経の働きが不安定になり、腸内環境に影響すると推察されます。過敏性腸症候群や便秘、下痢、クローン病、潰瘍性大腸炎なども
腰部および骨盤周囲の筋肉のコリが影響していると考えられます。したがって、まずは腰部周囲の筋肉のコリの有無を確認し、硬ければ腰部に刺鍼します。基本的には伏臥位で多裂筋、大腰筋、腰方形筋へ刺鍼しますが、仰臥位で腸骨筋へ刺鍼することもあります。もし、腰部周囲の筋肉にコリが見られなければ、後頚部だけへの刺鍼で口内炎は改善することが多いです。過労やストレス、睡眠不足などで口内炎が出るメカニズムについては、医学的には解明されていませんが、疲労やストレスは上半身の緊張を強いるため、肋間筋が収縮して呼吸が浅くなり、首肩に力が入りますから、首肩コリが発生します。すると、口腔内へ向かう神経や血管が頸部の筋肉のコリによって圧迫され、神経や血管に炎症が起こります。その結果、口内炎が発生すると推察されます。しかし、頸部へ刺鍼して首肩コリがとれると、口腔内へ向かう神経や血管の炎症がおさまり、酸素と栄養が満ちた新鮮な血液が供給されますから、新陳代謝は正常となり、細胞は問題なく新生することができ、口内炎が発生する確率は減少します。要するに、口内炎に対する針治療は頸部への刺鍼が主となります。首のコリがとれると、口内炎は出にくくなってきますが、重症の場合は、同時に生活の改善も必要になります。基本的には、虫歯や歯肉炎があったら全て治し、口腔内を清潔に保つよう努めて下さい。さらに、なるべくストレスをためないようにし、暴飲暴食を避け、栄養をしっかり摂り、免疫力を高めることも重要です。
*発声困難、喉の痛み、扁桃炎なども、頸部への刺鍼によって改善させることが可能です。その他の症状に関してはご相談下さい。