特に開業してから数年が経過し、ある程度の臨床経験を積み、技術が向上して評判が良くなってきた頃、どこへ行っても治らなかったような、難治な病態の患者が徐々に増えてくるようになる。
その鍼灸師の本質の如何は、この時点から大きく露呈するように思える。
ある鍼灸師は難治な患者に直面すると、露骨に拒絶反応を示し、施術者としての本分を放棄する。難局を乗り越えようと努力しなければ技術は向上せず、来院患者数が減少する。結果的に、鍼灸師向けの会員商法や講習会の開催、学術的な分野に特化した役職にシフトチェンジするなど、臨床現場から離れてしまうケースもある。
一方、ある鍼灸師は難治な患者に直面するや否や、これは何とかせにゃならんと、時には中国へ飛び、中医が記した文献や、中医に関する中国の動画などを漁りつつ、最新の刺鍼法を研究し、良い治療法、解決策が見つかるまで、ひたすら試行錯誤を繰り返す。
中国では古代から医師が鍼灸を業としてきた影響で、鍼灸の技術は日進月歩かつ世界最高レベルである。
したがって、鍼灸技術を向上させる近道は、中医から学ぶことである。中国語を理解できない鍼灸師は、この不可欠な過程を経ることが能わず、中々技術が向上しない。
基本的に日本の鍼灸師は、それぞれの流派で教わったマニュアルから逸脱することなく、ベーシックかつ限られた刺鍼法で難治な患者に向き合うようになることが多いようだ。
見立ての上手な鍼灸師は、3回ほど刺鍼して効果が見られなければ、オーソドックスな刺鍼法が適切でないと判断し、より効果的な刺鍼法を探ることになる。
しかしながら、無暗やたらに鍼の長さを長くしたり、鍼の太さを太くしたり、只々漠然と刺鍼本数を増やしたり、何となく留針時間を長くしてみたりするだけでは、中々改善せず、いつか壁にぶち当たるようになる。この壁の存在を無視するならば、そこで技術の進化はストップしてしまう。
向上心が欠如していたり、メンタル的に弱い鍼灸師は探求することを止め、鬱になったり、カルトに依存したり、会員商法の餌食になってしまうことがある。中には患者を治せないと絶望し、鍼灸の現場から完全離脱するケースもみられる。
そこまで行かずとも、割り切った考え方で、難治な患者の受け入れを完全に拒否して、慰安的な施術に特化した鍼灸師となってしまうこともある。
実際に、難治な患者に直面した時、自分の技術に問題があることを直視せず、患者に問題があるのだと決めつけ、難治な患者の治療を放棄する鍼灸師が少なからず存在する。
以前、松江にいた頃、単なる慢性頭痛や肩凝り、腰痛などで悩む患者が、市内で古くから営業している某鍼灸院で、数回施術を受けたことがあった。
しかし、症状は一向に改善せず、某院長に不満を述べたところ、「あんたはリウマチだろう。うちでは治せん」と突っぱねられ、施術を拒否されたと訴える患者が何人もいた。
実際には、リウマチだった患者は1人もおらず、当院で施術したところ、ほぼ全員が完治するか、明らかな改善をみせた。
確かに現代病には、鍼灸が対症療法としかなり得ないようなケースも多々ある。
例えば枠珍や農薬、薬物、薬品、食器、調理器具、食品などから間接的に摂取しているアルミニウムやホルムアルデヒド、カドミウム、水銀、鉛などの重金属類などには、血液脳関門を突破し、長期間に渡って体内に残留し、多彩な炎症症状を引き起こすものがあることが知られている。
近代から現代にかけて、雨後の筍の如く出現している自己免疫疾患、各種アレルギー疾患、膠原病、アトピー性皮膚炎、花粉症、慢性じんましん、潰瘍性大腸炎、クローン病、SLE(全身性エリテマトーデス)、原因不明の頭痛、重度のPMS(月経前症候群)、不定愁訴症候群、無汗症、川崎病、早発閉経、繊維筋痛症などいわゆる難治の病は、農薬や薬品、食品添加物などがほとんど使用されていなかった時代にはみられなかった病態ばかりだ。
つまり、人為的な関与によって生み出されたとしか考えられないような難治な病態が、日に日に増えている。
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病院で原因不明であると診断されたり、難治だと言われた病態の多くは、化学的な毒物や異物が日々体内に侵入し、長期にわたって残留することによって発現しているのかもしれない。
しかし、半世紀以上もの間、医学的、栄養学的、科学的な「常識」を重度に刷り込まれてきた人々にとっては、「常識」から逸脱しようにも、いわばセンメルヴェイス反射の如き、無意識下の拒絶反応を呈してしまうことが多く、どんなに確信的な事実を目の前に提示されようとも、確証バイアスによって「常識」から逃れることを自ら放棄してしまう。
「常識」のウソに気が付いた賢い鍼灸師が、「食品添加物や不要な薬はなるべく摂取しないようにして下さい」と言い聞かせてみても、患者は「そんなのは陰謀ですよ」とか、「先生は意識高い系ですか?」などと嘲笑し、全く聞く耳を持たないことが少なくない。
市場に出回っている薬物は、全て臨床試験を経た安全なモノであると盲信している人々が少なからず存在するけれど、実際には、第Ⅰ相臨床試験すら実施しておらず、中毒域、血液ー脳関門通過性、血液ー胎盤関門通過性、乳汁への移行性、髄液への移行性などの薬物動態不明なモノが病院ではバンバン投与されている。
世の中は、大衆が過労死ギリギリで働き続け、生涯不当な納税を強制され、適度に病気になって大量の薬を消費せざるを得ないような、非常に巧妙な奴隷的システムが仕組まれている。
そのために、長い時間をかけて、現代医学の存在価値と医師の地位を高め、薬がバカ売れするような仕組みを作る必要があったのだろう。
製薬会社の罠 薬を飲むと作用で病気に ゲゲゲの鬼太郎 凡太
その仕組みを構築するための重要なツールとなったのが、メディアである。