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棒灸と切りもぐさについて

 
切りもぐさは、長さ20cmほどの棒灸を25~28.5mmごとに切断し、その都度使い切りやすいように加工されたお灸です。原料となるもぐさの質や量によって、1個あたりの燃焼時間は大きく異なります。粗悪品は悪臭と大量の煙を放ちながら5分前後で燃え尽きてしまいますが、最上級品は13~20分もの間、芳香を放ちながら、煙少なく、安定して燃え続けます。粗悪品と最上級品の大きな違いは、その原料となるヨモギ、包装紙の質、加工方法です。まず、粗悪品はヨモギの産地や採取時期、熟成年数、加工方法、包装紙、出荷日などについての詳細が明らかにされていません。また、染色用の添加物(卵の黄色いケースや古紙)や硫黄、ヨモギの茎、粉末ヨモギ、成長しすぎたヨモギ、長期間密閉した状態で放置されていたヨモギなどが混入されていたり、機械で高温処理されているため、本来の薬効が失われているばかりでなく、有害な成分が含まれていることがあります。さらに、燃焼時間が短く、煙が多く、目に沁みるような悪臭がします。一方、最上級品はヨモギの成長に最も適した北緯30度に位置する中国湖北省蕲春県で栽培され、薬効が最も高まる端午節の1週間前後に採取されたヨモギを3年間倉庫で熟成させてから加工しており、薬効高く、煙少なく、目に沁みません。また、ヨモギのエキスを含む煙は空気を浄化する作用があるとも言われています。本草綱目に従い、極力熱処理を加えないよう杵と石臼で加工し、最低限の精製に留め、桑皮紙または艾葉紙で包んだ商品が最上級品の中でも最も高値で取引されています。THE TSUBAME STORE(BASE店/Amazon店) では最上級の蕲春もぐさを販売しています。
 
※桑皮紙:桑の皮を原料にした和紙です。桑自体の薬効が高く、もぐさの薬効との相乗効果が期待できるため、中国では高級棒灸用の包装紙として使用されていることが多いです。しかし、艾葉紙に比べて煙が多く出るため、施灸用の排気設備が整っていない日本では不向きです。
※艾葉紙:ヨモギの葉を用いて作られた和紙です。ヨモギのエキスが含まれているため、紙の色はパステルイエローです。他の包装紙に比べて最も煙が少なく、もぐさとの相性が最も優れています。桑皮紙同様、日本鍼灸界ではほとんど知られていません。
 
 

【棒灸施灸時に用意するもの】

 
□棒灸 □ターボライター □軍手 □ステンレス製トレー(11号浅型ケーキバットでもOK) □大きめの灰皿 □純棒灸または薬棒灸の直径に適合したステンレス製棒灸つぼ □消火後の棒灸を保管するフタ付きアルミ缶 □消火用の灰(無煙棒灸を使用する場合/仏壇用で代用可) □消火用の灰を入れる長筒型アルミ缶(無煙棒灸を使用する場合) □パレットナイフ □消火用の水と小バケツ □タイマー
 
 

【棒灸の使い方】

 
まず、棒灸、ターボライター、灰皿、棒灸つぼまたは灰を3割ほどの高さ(消火時に無煙棒灸の先端が埋まる高さ)まで満たしたアルミ缶をステンレス製トレーの上に置きます。次に、軍手を装着し、片手に棒灸、片手にターボライターを持ち、床やベッドに火の粉が落ちないよう、ステンレス製トレーの上で棒灸先端に点火します(無煙棒灸は点火まで時間がかかります)。無煙棒灸の有孔タイプは、無孔タイプに比べて火がつきやすいですが、折れやすいので気を付けましょう。
 
棒灸に火をつけたら、軍手を装着して、ペンを持つように棒灸をつかみます。そして、棒灸の先端を皮膚から3~5cmほど離し、熱感を加えつつも、火傷させない距離を定めて保つようにします。皮膚の上に灰が落ちないように、コリが気になる部位や患部の側面から上下または平行移動させて温めます。この時、火の粉が落ちるのを避けるため、狙った部位の真上で棒灸を移動させないように気を付けます。例えば、患部が背中にある場合は、患者を側臥位にさせて、患者の皮膚面に対して側面から施術するようにします。また、術者は利き手に棒灸を持ち、反対の手を患部周囲の皮膚の近くに添えて、ほど良い熱感を確かめながら棒灸を移動させます。施術中は棒灸先端の灰をパレットナイフなどで灰皿に適宜落とし、棒灸をゆっくりと移動させながら、患部周囲までほんのりと紅くなるくらいまで温めます。長時間温めすぎると火傷したり、灸あたりになる可能性がありますので、1部位につき10~15分を限度に温めます。
 
施術終了後、純棒灸と薬棒灸は専用の棒灸つぼへ、無煙棒灸は灰を満たした長筒缶へ差込み、酸素を完全に遮断して、確実に消火されたことを確認します。万が一、消火されにくい場合は、消火用の水に浸けます。使用後の棒灸はフタ付きの長筒缶へ保管しておくと安心です。
 
 

【切りもぐさ施灸時に用意するもの】

 
□切りもぐさまたは棒灸 □大きめの灰皿 □ターボライター □消火用の水 □棒灸フォークまたは棒灸フード □灸点ペン □灰削ぎナイフまたはパレットナイフ □タイマーまたは時計
 
 

【切りもぐさの使い方】

 
切りもぐさを最も簡便な使い方は、専用の棒灸フォークに刺して使う方法です。アイスピックや千枚通しなどでも代用できますが、施灸中に落下するリスクが高まります。また、棒灸フードや各種温灸器、箱灸などで使用することも可能です。特に棒灸フードは取っ手と網が付いているため、背部や臀部、大腿部後面などへより安全に施灸できます。棒灸フードは取っ手を外して使うとコントロールが容易になります。
 
 
1.施灸する前に、窓を開けたり、換気扇を稼働させるなど、通気を良くしてください。
※ベランダなど通気が良すぎる場所での施術は灸の火勢が安定せず、危険です。
2.施灸部位をあらかじめ選び、灸点ペンなどで記しをつけておきます。疾患別の施灸部位については、当院ウェブサイト「家庭で出来る棒灸療法」をご参照ください。
3.棒灸フードを使用する場合は、先にもぐさの片側に点火してから、フード内に入れます。切りもぐさフォークなどを使用する場合は、先にもぐさをフォークに刺してから片側に点火します。タイマーを20分以内に設定します。
4.点火したもぐさは施灸部位から少し離し、かざして温めます。皮膚に直接もぐさを当てないように、灰が皮膚へ落下して火傷しないように注意して温めます。1部位につき、5~10分を限度にし、1日あたりの総施灸時間は20分を超えないようにします。施灸頻度は体調をみながら調節しますが、一般的には2日に1回施灸するか、毎日施灸する場合は3日に1度休みます。
5.施灸を終えたら、使用済みもぐさを消火用の水に浸し、完全に消火したことを確認してください。
6.施灸した部位は24時間ほど冷水を当てないようにします。また、施灸当日は冷たいものや刺激物、アルコール、海鮮類などの飲食、激しい運動、精神的ストレスなどは避け、ゆったりと過ごすようにしてください。
 
※棒灸フォークは日本では一般的に知られていなかったため、2024年7月に当院長が日本へ輸入し、「棒灸フォーク」と邦訳、命名し、THE TSUBAME SHOPにて販売を開始しました。
 
 

【施灸上の注意】

 
・灸の成分が臭いやヤニとなって壁紙や家具、布類に付着する可能性があります。
・消火する場合は水に浸すか、灰を入れた金属製の長筒などに入れ、完全に火が消えたことを確認して下さい。水に浸した場合は、完全に乾燥させてから再使用して下さい。
・燃焼部は高温です。直接皮膚に当てたり、近づけ過ぎると火傷する恐れがあります。
・空腹時や過食後、飲酒後、怒りで興奮している時、喉が渇いている時、過労時、過緊張状態の時などは施灸しなで下さい。
・妊婦や糖尿病患者、免疫疾患などの易感染傾向患者、出血傾向にある者、ケロイド体質者、胎児、乳幼児、高齢者、重度の精神病患者、重度の呼吸器疾患、肺炎など、灸治療が適さない患者には施灸しないで下さい。
・顔面部や陰部、粘膜、外傷部などには施灸しないで下さい。特に顔面部は、真上から施灸すると灰が落ちて火傷する可能性があります。棒灸での施灸は皮膚面に対して側面(横方向)から行うのが比較的安全です。
・食前食後の1時間前後は施灸を避けて下さい。また施灸後1時間程度はサウナや入浴、水浴び、運動も避けて下さい。
・施灸後は白湯や常温水を適宜飲み、体調を整えて下さい。また、冷たいものの飲食は避けて下さい。
・施灸中、めまいや悪心、動悸、多汗、顔面蒼白などの症状が現れた時は、直ちに施灸を中止して下さい。
・施灸後は棒灸の火が完全に消えたことを確認して下さい。
・施灸中は灸の灰が皮膚や床に落ちないよう注意して下さい。施灸専用の木箱などを用いると比較的安全に施灸できます。
・灸は煙が大量に出ることがあるため、換気の良い場所で施灸して下さい。火災報知機やスプリンクラーなどが反応する可能性のある場所では施灸しないで下さい。
・灸はあくまで補助的療法として用いるべきものであり、医師による診察および治療の代わりになるものではありません。
・棒灸は専用の金属製長筒や、乾燥剤を入れたフタ付き容器に入れるなど、高温多湿を避けて保管して下さい。
 

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