• HOME
  • >
  • 難聴・耳鳴りの鍼灸治療レポート

難聴・耳鳴りの鍼灸治療レポート

 

 
*現在、当院では難聴や耳鳴り、耳管開放症、耳閉感、メニエール病など、内耳疾患の新規患者は受け付けておりません。
 

以下の内容は2015年秋頃に来院した患者の治療経過を患者さん自身が記録し、当院へ提供、公開を許可して下さったものです。こういった実体験に基づくレポートを提供していただけるケースはほとんどないので、貴重な記録として、また、難聴専門を謳う著名な鍼灸院へ通ったものの、全く効果がみられなかったような難聴や耳鳴りに苦しむ患者や、左記のような患者を治せない鍼灸師の一助となるよう、実際の施術内容を加筆して、ここに公開しました。刺鍼の画像や短時間の動画は当院公式facebookやInstagram(当院トップページにリンクしてあります)に随時UPしていますので、鍼灸師の参考になると思います。基本的に、一般的な突発性難聴や耳鳴り、耳閉感、耳の異常感などは、ほとんどが首の筋肉のコリによって、椎骨動脈や外頸動脈など耳の周囲や内耳を栄養する血管や神経が障害されることに原因があるようです。したがって、硬くなった筋肉へちゃんと刺鍼しないような、刺鍼時に痛みや得気と呼ばれる響きを伴わない、日本でよくみられる経絡治療などのユルい刺鍼法では、完治させることは難しいようです。当院の針治療は非常に痛いですが、そういった鍼灸院で全く改善しなかったような病態であっても、短期間で完治または改善させることが可能です。耳鳴りや難聴が専門であると高らかに叫び続ける鍼灸院でまったく効果がみられなかったとしても、当院で簡単に治ってしまう可能性はあります。
*アップルストアにはスマホにて自分で聴力検査を行える「Hearing Analyzer」というアプリがあります。以下の画像はその実際の聴力の経過を出力したものです。鍼灸院などでの難聴治療の経過を科学的に検証する一つのツールになるので、大変便利なアプリです。
*当院では、以下に列挙したような病態と併発している難聴、耳鳴り、耳閉感、耳管開放症などは治すことが出来ません。
・病院で何らかの精神疾患を患っていると診断され、長年、向精神薬などを飲み続けている。
・何の脈絡もなく、突然発狂したり、泣き叫んだり、暴れたり、卒倒したことがある。
・妄想癖、虚言癖などがある。
・他人のささいな言動によって、怒りが爆発しやすい。
・先天的に鼓膜が薄いと診断されたことがある。
・脳内に腫瘍や動脈瘤など、器質的な異常が見られると診断されたことがある。
・日常的に感じられる精神的なストレスが強く、理性や情緒を保つことが困難である。
・噛み癖や歯ぎしり、顎関節症などが酷く、歯科医院などで難治であると診断された。
・重度のストレートネックや頸椎症で、両耳に異常が出ている。
・耳の異常感が数年以上継続しており、全く改善するような気配がない。

・ヘビースモーカーで動脈硬化が進行している。
 
 

実際のレポート(患者さんから頂いた原文)

 
*以下のレポートには病院や鍼灸院の実名が記録されていましたが、名称と所在地は英字にて伏せてあります。
*以下のレポートに記されている経穴名で、平仮名で書かれているものはカッコ内に正式名称を記しました。また、解釈に差しさわりのない誤字脱字はそのままにしてあります。



この度は私の難聴及び、耳鳴りを治して頂き、本当にありがとうございました。一時は仕事を辞めようかと思ったほど落ち込み、人生に絶望してしまった時期もありましたが、先生に人生を救われました。御礼に何かできる事はないかと考え、私の今回の症状の報告書を書きました。大変豊富なご経験を有する先生に対して無礼を承知ではございますが、今後の患者さんの為に一つのエビデンスとしてお読みいただけましたら幸いに存じます。(駄文をお許しください。)本当にありがとうございました。
 

2015年10月17日  ○○○○(患者氏名)

 

2015年8月13日(木)

朝方右耳に「キーン」という耳鳴りと共に強烈な痛み。一度寝て起きた時にはボンボンという低音の耳鳴りと聞こえの悪さを感じ、近くの耳鼻科へ。急性低音型感音性難聴と診断され、メチコバール、アデホス、カルナクリン、ゴレイサンが処方される。25Hzの低音部が30と軽度難聴あり。
 

2015年8月14日(金)

聞こえの悪さと耳鳴りが悪化。ヘリコプターの近くにいるような絶えられないほどの大きな耳鳴りを感じ、別の耳鼻科へ。プレドニンを追加処方され、一日30mg服用開始。25Hzは45ほどまで悪化。50Hzも30ほどまで悪化。帰り道、駅でめまいを生じる。
 

2015年8月18日(火)

土日月と3日間、違和感は消えなかったが月曜には少し回復傾向にあった。だが火曜日に再び悪化。強烈な耳鳴りで再度別の耳鼻科へ。聴力は25Hzで30まで回復はしていた。
 

2015年8月19日(水)

午後に耳鳴りが治まる。耳の中に水が入ったような感覚は残ったが、耳鳴り消失。
 

8月21日(金)

二日ほど安定していた耳鳴りが再度悪化。二時間ほど強いめまいを感じる。めまいの後に耳鳴りが小さくなる。この日の状況を医師に伝えると、メニエールの疑いもあるとのことでイソバイドが追加処方される。この日から八王子のとある鍼灸院に通う(週三回)。置鍼を一切せず、単刺を体全体に20分ほどし、終了。(10回ほど通ったがまったく改善の兆しが見えず、北京堂と出会ってから行くのを止めた。)
 

8月24日(月)

23日、24日と安定していたがこの日の夜から再び調子が悪くなる。耳鳴り再開。
 

8月26日(水)

夜に耳鳴りがかなり小さくなる。
 

8月27日(木)

治ったかな?というところまできた。最後のプレドニンを朝一錠のみ、ステロイド終了。
 

8月28日(金)

昼間は完治したと思うほど調子がよくなった(水が入っている感じだけはとれない)が、夕方にかけて違和感を感じ始め、夜に耳鳴り再開。
 

9月11日(金)

前日まで大きな変化はなく、依然として耳鳴り、耳の聞こえの違和感は残っていたが、この日は夕方に改善。しかし夜にはぶりかえす。耳鼻科ではとりあえず薬を飲みながら様子を見てくださいとのことで様子を見ていたが、その後も全く改善はみられなかった。

↑しばらくはこの状態で固定された。左が低音、右が高音部。下に行くほど重症。

9月22日(火)

耳が改善されず、かなり落ち込み始め、初めて北京堂へ。
 
横向きで35分置鍼。帰り道は放心状態で耳鳴り気にならなかったが、当日に大きな変化は感じず。お風呂上りだけ少し耳鳴りが小さくなった気もしたが就寝時には依然として大きくなっていた。
 

9月23日(水)

翌朝良くなっている可能性もあるとのことで期待したが、あまり変化を感じなかった。
 

9月24日(木)

耳鳴りは残っていたが、耳鼻科での聴力検査の結果、低音部25Hzの聴力が20ほどまで回復、50Hzは10まで回復。ステロイドやめてから聴力回復したのははじめて。ステロイドはもう使えないとの事で漢方のサイレイトウ(柴苓湯)が追加される。夕方頭痛と首肩こりがひどかったが、その後はなんとなく耳のつまりが改善されたような感じがした。

9月25日(金)

北京堂二回目。横向きで35分。耳のつまりも朝方に強く感じるが、活動をはじめるにつれとれてくる。耳鳴りは相変わらず大きいまま。
 

9月29日(火)

北京堂に行った当日はあまり変化なく、翌日も大きな変化なく、その翌日に少し悪化(だるさもあり)。そのまた翌日に少し軽快というサイクル。この日にはじめて耳鳴りの音に変化。ヘリコプターの音のような耳鳴りが風を切るような音に変化し、継続的に鳴っていたのが断続的になり、音も小さくなる。外で歩いていればあまり気にならないほどまで。ただ、静かな部屋に入るとやはり気になる。夜にやり方を変えて北京堂三回目。うつぶせになり腰にも鍼を打っていただく。耳に響く感じというのをこれか!と初めて実感。それまで顎に響いていたが、耳に響くというのを体感したことがなく、よくわからなかった。腰に打つと脚に電気が走るようなしびれを感じた。打って頂いて2-3時間ほどしてから一瞬耳鳴りがとまる。しばらくしてやはり鳴っている様な鳴っていないような、やはり鳴っているかというレベルまで小さくなった。耳のつまりのようなものはほとんど消失。聞こえもまったく違和感なし。
 

9月30日(水)

いつもなら鍼を打って頂いた翌日は変化なくむしろ少し悪化している傾向があったが、この日は朝から小さい耳鳴りを感じる程度。何かに集中していれば気にならないレベルの小さな耳鳴り。何か音があれば耳鳴りは聞こえないというくらい小さくなる。帰宅途中軽い頭痛と肩、首こり。耳鳴りの消えるときもあるが、耳に水が入ってくるようなフワフワとした感覚と共に耳鳴りは再開する。ただし、前に比べて音は格段に小さい。夕方お風呂から上がって就寝前に変化あり。打ってもらった腰周辺に鍼を刺したときと同じような響きを感じ、耳鳴りが少し大きくなる。耳に重く響く鈍痛もあり。(好転反応?)
 

10月1日(火)

やはり朝は小さい耳鳴りあり。昨日より少し大きい気も。しかし相変わらず外に出れば気にならないレベル。音にも変化があり、ボイラー室に入っているかのようなボワー、ボワーという柔らかい耳鳴りに変わった。気づいたら肩に力が入っている。耳のつまりは朝に少し残っているのみで、起床して5分もすれば消失。耳の中の響きを数回感じる。筋肉の痙攣? 腰の違和感は消失。
 

10月2日(金)

起床時、通常なら耳鳴りが一番大きく感じる時間だがほとんどなし。ただし、形容しがたい違和感はまだ残っていた。恐らく多少は右の聴力が低下で固定(それでも北京堂一回目の施術で正常値までは回復)していたためその聞こえのアンバランスさが、耳鳴りがなくなって目立ってきたのか、それともいままで一ヵ月半続いた耳鳴りに慣れてしまっていたのかは不明。耳のつまりは少し感じる。二日後の夕方に四回目の施術を予約。たまに耳に痛みを感じる。
 

10月3日(土)

北京堂で四回目施術後、二時間後くらいに一時期耳鳴り消失。数時間後に再び小さな耳鳴り。10月5日まで特に大きな変化はなく、朝に小さな耳鳴りが気になり起床。活動していくうちに小さくなり、昼は特に意識することなく、静かな場所にいくとボーボーと鳴っているのが分かるというのが持続。
 

10月7日(水)

ここ数日間は耳鳴りが消える時間(特にお風呂後など)も出てきているが、一時間ほどで再発。6日の起床時は鳴っていなかったが、しばらくして鳴りだした。ただ、この一週間音が小さいの(換気扇のような低いボワーボワー)は続いており、静かな場所以外ではほとんど気にならない程度。耳のつまりはこの一週間ほとんどない。明らかに改善傾向ではあると思うが、あと一歩がなかなか改善しない。夕方頃に少し悪化。耳鳴りの大きさは同じ位だが、違和感を強く感じる。耳に響いた場所に何か痛みのような詰まったものがあるが、時間と共にその痛みが、鼻と耳の間、喉、首と流れていく。老廃物が流れているのか不明だが、その現象が5、6回と続いた。その後夜に急なだるさと耳閉感、肩こりを感じる。風邪をひいたときの感覚に類似していた。なんとなくだが聴力が少し低下したような感じがした。
 

10月8日(木)

朝起きてもなんとなくだるさは残っており、聞こえにくさも多少は残っていたが活動していくうちに改善。耳鳴りの音は小さいまま一定。静かなところに入ると鳴っていて、換気扇の音などが耳に響く。ただし、和りょう(和髎)を数回強めに押すと耳のつまりも耳鳴りも一時的に改善される。耳鼻科での聴力検査の結果、相変わらず正常値で固定。

10月9日(土)

北京堂五回目。横向きのスタイルに戻り、えいふう(翳風)にかなり深めに施術頂いた。置鍼して20分頃から耳鳴りの音が一瞬消える。帰宅後、かなり疲れを感じ早めに就寝。耳周りでツツー、ツツーと毛細血管に血が流れたような音を数回確認。
 

10月10日(日)

朝、なんとなくだが耳鳴りが小さくなった(ほとんど鳴ってない)気がした。この日よりイヤホンや耳栓がまったく要らない状態に。それまでは仕事中でも出かけるときでも常にしていた。外すと耳鳴りが再開するため。
 

10月11日(月)

朝、ほとんど気にならなかったのでこの日もイヤホンなしで外出。お昼ごろに耳周りに痺れのようなものを感じ少し耳鳴りが鳴った時間があったが、一時間ほどで改善。その後低音の耳鳴りは消失。よく聞いたらシャーっと中音域の音がしていたが、気にならないレベル。今まで鳴っていたのが低音の耳鳴りで気づかなかったのか、それまでの耳鳴りの音が変化したのかは不明。
 

10月12日(月)―14日(水)

シャーという音は気にならないレベルで継続している気がするが、低音はここ数日まったく鳴ってない。筋肉痛も徐々になくなってきており、違和感もほとんどなかった。13日に飲み会があり、うるさいところだと少し嫌な感じはしたが、家に戻っても翌朝も特に変わりなく耳鳴りはなっていなかった。夕方肩が凝り、耳周辺に頭痛も少しする。14日夜寝る前、木枕使用中に再度耳周りにツツー、ツツーと血液の流れるような音を一度だけ確認。
 

10月15日(木)

耳周りの筋肉が張ったような感じは少し残っているが、耳鳴りは一切なし。日中はほぼ病気になる前と同じような感じで活動ができる。耳鳴りを気にしていままで窓を少し開けて寝ていたが、もう部屋の窓を閉じきっても耳鳴りが気にならない。車を運転中も騒音を気にしてイヤホンなどしていたが、それも気にならないのでイヤホンは全くつけない生活に戻った。健常な日々が戻ってきた気がする。
 
 
 

10月17日(土)

前日同様、耳周りの筋肉が張った感じが時折感じる程度で耳鳴りは消失したまま安定していた。北京堂六回目。肩付近も刺鍼頂く。えい風(翳風)周りの鍼は浅い部分ですぐに耳に響きを感じた気がした。前日まで時折つばを飲み込んだ際に違和感を感じるときもあったが、それも皆無になった。昼より薬も中止。
 

総論

罹病期間:8月14日~10月17日(二ヶ月)
 
 
通った病院:S耳鼻咽喉科(東京都C市)、耳鼻咽喉科Iクリニック(東京都S区、K大耳鼻咽喉科元准教授)、M耳鼻咽喉科(東京都H市、T大耳鼻咽喉科元教授)、Hクリニック(東京都H市、早期に聴神経腫瘍の可能性も考え脳MRI検査。結果、脳には全く異常なしとの診断)
 
 
飲んだ薬:プレドニン(30mg5日間、20mg3日間、10mg3日間、5mg1日 計二週間のパルス服用。一時的に何度か改善したが服用を中止したら再発。ただ耳の中に水がつまった感じはどうしてもとれなかった。恐らく強力に炎症を抑えていただけで根治治療にはなっていなかったと予想)、メチコバール(ビタミンなので継続)、アデホス(17日まで継続)、ゴレイサン(最初の耳鼻科で処方 3日ほどで中止)、カルナクリン(17日まで継続)、デパス(三回で中止)、レクサプロ(三回で中止)、ムコスタ(胃薬 17日まで継続。プレドニンによる胃腸保護のため処方)、イソバイド(朝、夕のみ 16日夜まで)、サイレイトウ(17日まで)、バルトレックス(ステロイド終了後の5日間のみ 内耳内ヘルペスウイルスの可能性も考え処方頂いたが変化無し)
 
 
通った鍼灸院:I鍼灸院(東京都H市、10回ほど、全く変化無し)、北京堂三鷹(☆)
 
 
北京堂での治療期間:9月22日~10月17日(計6回)
 
 
北京堂通う前:低音部軽度難聴、耳閉感、二度ほどめまい、激しい低音の耳鳴り(いわゆる蝸牛型メニエール症候群)
 
一回目 横向き施術:聴力がギリギリ正常値まで回復
 
二回目 横向き施術+お灸施術:耳のつまりが改善
 
三回目 うつ伏せ施術+お灸施術:耳鳴りの音に変化(柔らかい音になる)
 
四回目 うつ伏せ施術+お灸施術:耳鳴りの音が小さくなる(静かな所では気になるレベル)
 
五回目 横向き施術+お灸施術:耳鳴り消失(耳周りの筋肉のコリが少し残る程度でほぼ完治)
 
六回目 横向き施術+お灸施術:耳鳴り消失、経過観察
 
 
心がけたこと:水の過剰摂取を控える(ネットの情報を鵜呑みにして一日2~3L飲んでいたが、北京堂HPをみて)、ジムでの筋トレを中断、早寝早起き、木枕(施術二回目の時に先生にすすめられて)、風呂10分間首まで。自作TRT療法(イヤホンで雑音を聞きながら耳鳴りをごまかしていた。初期はかなり有効だったが、当然イヤホンを外せば耳鳴りが鳴る。後期に北京堂の鍼治療で耳鳴りが小さくなってきたので中止)


 

実際の施術の記録(一部カルテより転載)

患者:20代男性、営業職
来院のきっかけ:当院ウェブサイトをみた
症状:約1か月前から右耳鳴り、難聴、耳閉感、めまいは2度、病院にて急性低音型感音難聴、メニエール病の疑いとの診断
処方薬:メチコバール、デパス、レクサプロ、アデホス、イソバイド、ムコスタ、柴苓湯
その他:週1回ジムにてトレーニング、高血圧傾向



耳と顎の話:耳の異常は頸部筋肉の硬化に起因するケースもあるが、実際には顎関節の異常によることが多い。これらの詳しい機序は解明されていないが、椎骨動脈や鼓室や耳管に分布する外頸動静脈およびそれらの分枝が、周囲の硬化した筋肉に圧迫されていることに原因があるのではないかと推察される。何故なら実際に、耳の病態を抱える患者の大半は頸椎や顎関節に何らかの異常が見られ、特に側頭筋や内外翼突筋、咬筋、斜角筋などが異常収縮を起こしていて、それらを刺鍼や施灸でゆるめてやると、耳の異常が消えることが多いからである(これらの筋肉のほとんどは外頸動脈とその分枝が栄養している。)。北京堂では主に斜角筋と翳風への刺鍼をメインに治療しており、北京堂式を開発した浅野周先生(私の師匠)は「翳風奥にある硬い筋肉に当てるんよ。2寸を入れて耳の中に得気が行くように刺しなさい。」と教えている。私も数年ばかりは言われた通りに漠然とやっていたのだが、どうも治りが悪い人がいたりして、色々と考察したり、試行錯誤しているうちに、顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋にも根因があるのではないかと思い始めた。実際にそのあたりの筋肉が硬いし、そこを狙って鍼灸を施すことで、どこへ行っても何をしても治らなかったような耳の異常が治るのだから、顎関節周囲の筋肉の異常から耳の異常が引き起こされているのではないかという考えが日々強くなってきている。ゆえに、日常的に仕事やその他のストレスで食いしばる癖があったり、就寝時に歯ぎしりするようなことが常態化している人は、まず最初に顎の異常感、後に耳(三叉神経痛など)の違和感が現れ、最終的に耳に異常を来すというパターンが多いようだ。ほとんどの患者は歯ぎしりが酷くて歯並びが悪化していても、無意識の食いしばりで歯が割れたりしていても、それらが耳の異常と関連していると気が付かないことが多いため、問診してもそのことについて語らない。したがって、耳の異常感を訴えて来院する患者には、初診時に予め顎の異常がないかどうかを聞いておくことが重要である
 



初診(9/22):まず、初診時には顎関節に何らかの異常感、例えばクリック音や夜間の食いしばり、起床時の顎の疲労感、顎関節症の既往の有無を確認しなければならない。この患者においては顎に関する異常が認められなかったため、頸部を中心に施術することとした。初診時、特に鍼治療が未体験である患者においては、施術前に強い恐怖感を抱いていて、緊張のあまり刺鍼時に迷走神経脊髄反射などを起こして、突然の多汗、悪寒、吐き気、めまいなどを起こす可能性があるから、初回の施術は軽めの刺激を心掛けなくてはならない。特に翳風周囲の穴位は刺激が強度に感じられやすいから、刺鍼する部位の順番などは慎重に決めてゆかなければならない。基本的に北京堂では、耳の異常は悪い方の耳を上に向けた側臥位で施術するパターンが多いが、伏臥位で翳風の周囲のみに刺鍼するだけでも完治するケースもある。しかし、伏臥位だと息苦しいとか、閉所恐怖症であるとか、患者が何かしらの問題を訴える場合は、患側を上にした側臥位で刺鍼すると良い。今回のケースでは、初回は右上側臥位、右翳風、右下関、右耳門、右斜角筋を中心に刺鍼した。発汗量が多く、強刺激はかなりキツそうな印象だったため、初回は治すことより鍼に慣れることを優先し、軽めの刺激で終了した。
 
2回目(9/25):初回の治療で耳閉感が減り、聴力が若干戻ったとのことで、体位は前回同様右上側臥位で、右下関、右翳風、右耳門、右率谷、右斜角筋、右合谷、右外関を中心に本格的に刺鍼。棒灸で患部を温めると治りが良くなるのと、抜鍼時の痛みが減少しやすくなるため、この日から棒灸が出来る時間に予約を取ってもらうよう伝える。
 
3回目(9/29):耳鳴りは少しずつ減少しているがイマイチ効果が悪いと思われたため、施術体位と刺鍼法を変更する。変化が悪い場合は施術体位や刺鍼法を変えてみると、患部への刺激が変化して、一気に治りが良くなることがある。この日は伏臥位にて右翳風5本、大腰筋、陽陵泉、三陰交など中心に刺鍼、棒灸をする。
 
4回目(10/3):耳鳴りが確実に減っているとのことで、この日は前回と同様の施術で様子をみる。右翳風多鍼、右耳門、大腰筋、陰陵泉、三陰交、陽陵泉、棒灸。
 
5回目(10/10):耳鳴りはわずかに残る感じで、耳閉感は完全に無くなったとのこと。回復に追い打ちをかけるため、再び右上側臥位で施術。施術体位と刺鍼部位、刺鍼法をうまくローテーションさせると治りが良い(これは経験則で発見した)。また、翳風には基本的に2寸の長さの鍼を使った方が効果があるのだが、強い刺激に耐えられない患者には最初は寸6の鍼を使い、治りが悪かったり、慣れて来たらと2寸を使うと良い。当院では基本的に寸6で治りが悪い場合、様子を見て2寸を用いるようにしている。この日は完治を目指して若干強刺激、右翳風2寸4本、右斜角筋、右頸部脊際、右側頭筋、右翼突筋、右耳門、右太陽などへ刺鍼、棒灸も行う。
 
6回目(10/17):耳鳴りは完全に消失したとのことだったが、まだ首肩コリが若干あるようなので、念のため刺鍼する。右上側臥位にて右翳風2寸3本、右率谷、右下関、右耳門、右外関、右三角筋、右背上部を中心に刺鍼し、棒灸をする。とりあえず、次回の予約はしないでもらい、2~3週間ほど再発しないかどうか経過観察、再発したら予約を取ってもらうよう伝える(11/5現在、連絡なし)。
 



 
追記:通常、罹患して間もなければ、突発性難聴などが原因の耳閉感は3回前後の刺鍼で完治する。耳鳴りは6~10回程度。しかし、精神疾患に起因するような難聴、耳鳴りや、先天的に鼓膜が薄いことによるような場合など完治しないケースもある。メニエール病は医学的には難病指定されているが、当院のような鍼灸治療では比較的簡単に改善する。またメニエール病に付随する耳閉感や耳鳴り、回転性めまいはほとんどのケースにおいて治りやすいが、罹患年数が長いメニエール病の難聴は治らないことがある(長年聞こえにくいことで有毛細胞が減少しているためと推察される)。
 
最近は突発性難聴の患者が増えているようで、病院や難聴専門を謳う鍼灸院へ行っても全く良くならない、という声を多々聞く。また、N〇Kで有名になった水を1日2リットル飲むとメニエール病に聞くなどという医学的に全く理解出来ないような怪しい噂を鵜呑みにしている患者も少なくないようだが、水の飲み過ぎは腎臓に多大な負担をかけることは明白であるし、むしろ害にしかなりえないことは生理学的に考えれば事実であるから、やっている患者はすぐにでも止めるのが賢明である。また日本ではほとんど知られていないようだが、漢方薬(中药)も「批评中医(方舟子著、中国协和医科大学出版社)」などで暴露されたように、長期服用は発癌性その他の毒性が認められている様子であるから、漢方薬の使用にも慎重さが必要である。ちなみに、生薬は通常の植物より作用が強いから効果があるのであって「漢方薬は副作用がない」、というのは大嘘である。その証拠に、中国では昔から「药三分毒(薬には多少の毒がある)」という故事が知られている。
 



 
当院での施術を希望される方へ:まずは事前に「来院時の注意事項」「当院の鍼灸治療が適合しない患者」「当院では対応不可の病態」を必ずお読み下さい。通常、耳の異常の治療は3~10回程度の施術で完治するケースがほとんどです。これまでのケースを診てきた限りでは3回以内に何らかの変化が見られれば数回程度の施術で完治する可能性が高いですが、3回目くらいまでに何ら変化が見られなければ、治らない可能性が高いです基本的に側臥位(横向き)で片側ずつ施術する方が治りが良いため、両耳が悪い場合は日を改めて左右の耳を別々に施術してゆくようになります(つまり両耳の施術は1回につき2コマの予約が必要です)。片側だけの耳が悪い場合は1コマずつの予約で施術してゆきます。理想的には施術後2~3日の間隔を空けて通院して頂き、施術してゆくのが良いのですが、遠方から来院されるなど、日帰りが不可能な場合は近くのホテルなどに1泊か2泊して頂き、2日連続で施術するようになるパターンが多いです。2日連続の施術で完治しなければ、再び次週施術してゆく、という具合です。お住まいが近場で日帰り通院出来る場合は、3日おきくらいのペースで施術します。また、軽度であれば鍼のみの施術で完治しますが、重度であったり、より早く高い効果を求められる場合は、棒灸施術を同時に行った方が断然に治りが良いです(基本的に棒灸が出来るのは次のコマに患者がいない時だけですので、予約の際に棒灸施術を希望すると伝えて下さい。なるべく棒灸が出来る時間帯をご案内します。ちなみに棒灸施術は1回500円が別途必要です。)。また、治療日以外の日は木枕で首を矯正するようにしておくと、治りが早く、再発しにくくなります。