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保険の取り扱いについて

当院では、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)のみを取り扱っています。他の鍼灸院や整骨院と同様に健康保険や労災保険(労働者災害補償保険)を取り扱うことも可能なのですが、現状では以下のような問題点があるため、当院においては、現在は取り扱いを中止しています。

A:患者自身が、定期的に医師から同意をもらわなければならない。→患者が鍼灸院でもらった同意書を医師へ渡し、病院での保険治療中止を乞い、鍼灸院での保険治療開始を懇願する必要がある。しかし、たいていの医師は同意書にサインすることが自身の治療放棄に値することや、鍼灸治療自体に懐疑的なため、サインを拒否するケースが多い。また、一度同意をもらえたとしても、3カ月ごとに再び医師の同意を得なければならず、整骨院のように、気軽に保険治療を受けることが出来ない。
 
B:鍼灸院での保険治療を開始すると、同一疾患にて医療機関での治療を受けることが出来なくなる。
 
C:鍼灸院での保険治療に対応している疾患が少な過ぎる。→鍼灸院で保険治療可能な疾患は①神経痛、②五十肩、③頸腕症候群、④腰痛症、⑤リウマチ、⑥頚椎捻挫後遺症の6つのみで、①~⑥すべての疾患において、医師の同意が必要である(2013年6月現在)。ちなみに、整骨院で保険治療可能な疾患は①打撲、②捻挫、③挫傷、④脱臼、⑤骨折の5つのみで、④と⑤以外は医師の同意が必要ない。

 

 
D:鍼灸院へ支給される療養費が安すぎる。→2013年6月現在、保険者から鍼灸院に支払われる療養費は、1回の施術につき1230円(「はり又はきゅう1術」の場合、「はり・きゅう併用2術」でも1500円のみ→2014年4月に1術1270円、2術1510円に改正されましたが、実質的にはほとんど変わっていない感じです。)である。ゆえに、整骨院と同様、短時間で患者を回転させることを強いられることになり、じっくりと時間をかけて治療すると大幅な赤字をくらうようなシステムになっている。一般的に、施術料の相場は1分の施術につき100円で、療養費が1230円であるならば、施術時間を15分以内に収めなければならない(整骨院が短時間で患者を回転させているのは、このようなカラクリによる。)。しかし、どんな病状であれ、余程の軽傷でない限り、毎回15分程度の施術で治るものなどほとんどないだろう。結果として、鍼灸院においては、現在の保険制度では病態が難治になればなるほど、完治させることが事実上不可能に近くなっていることは明白で、この事実から目をそらして「当院は保険治療が可能です」などと騒ぐことは、「当院は安くやるかわりに治せるかどうかわかりません」と明言しているに等しく、ハナから治療を放棄し慰安を選んでいると指摘されても反論は出来ないであろう。
 
E:短時間での施術を強いられる。→患者を本当に治そうと思うのならば、それなりの時間を1人1人の患者に費やさなければならない。では、1人の患者にどのくらいの施術時間を割けば、病を好転または完治させることが可能なのか。当院では、まずは昭和期に活躍した木下晴都という医学博士の実験結果をベースに、施術時間を設定している。その実験の一つが、ラセーグ兆候のある坐骨神経患者を30人集め、3群にわけて10分、20分、30分で置鍼(鍼を刺したまま、一定時間置くこと)したところ、30分置鍼したグループにおける治療効果が最も高かった、というものである。実際、当院においても、数年間にわたり、10~60分で実験したところ、35分間置鍼することがベスト(患者への負担が最も少なく、筋肉が最もゆるみやすい)であるという結論に達し、現在は患者1人あたり35分置鍼することで、一定の治療成績を維持している(ちなみに35分以上の置鍼では治療結果にほとんど変化がみられなかった。また、長時間の置鍼は肺塞栓を引き起こす可能性があるため、35分で抜鍼するのがベストである。)。しかし、実際は鍼を打つ時間や抜く時間も加味しなければならないので、患者1人あたりに割くべき1回の治療時間は60分(置鍼35分+施術時間25分)程度がベストである、ということになる。ゆえに、保険治療を扱うとなると1230円の療養費で60分以上も割かねばならず、鍼灸院の経営存続は不可能になる(→保険治療のみで鍼灸院の経営を存続させようと思えば、自ずと治療時間を短縮せねばならないため、結果的には患者を治すことが出来ず、治療院自体の評判も落ち、経営不振のち廃業を迫られかねない。患者にとっても鍼灸師自身にとっても不幸である。)。

 
以上のように、現状では、鍼灸院にて保険治療を行うとなると、整骨院のように短時間(5~15分程度)の置鍼を余儀なくされるため、取り扱わないことにしました。一番の問題は、短時間の置鍼では硬化した筋肉は十分にゆるまず、何度繰り返し施術しようとも、完治は見込み難い、という事実です。ゆえに、当院においては、大半の整骨院で行われているような「慰安鍼(短時間の施術かつ浅鍼にて浅層部の筋肉しかゆるめず、一時的に良くなるような感じだけの鍼治療)」ではなく、「完治鍼(長時間の施術かつ長鍼にて深層部の筋肉もゆるめ、根治を促す鍼治療)」を信条としているため、長時間の施術を不可能にしている現在の療養費制度(健康保険などによる治療)は採用していません。確かに、保険を扱うことで、非常に安い施術料にて鍼治療を提供することも可能なのですが、一生通っても治らないような保険治療であれば、取り扱う意味もありません。
 
国は日本の国民皆保険制度について「安い医療費で高度な医療」などと自画自賛していますが、実際は多くの患者を完治させるような高度な医療が提供されているとは到底思えません。その証拠に未だに何百万、何千万という慢性頭痛、慢性腰痛の患者があふれています。慢性痛さえ治すことが出来ない医療など、高度と呼べるはずがなく、身近な病状さえ好転させることが出来ないのであれば、難病の類など治せるはずがありません。実際に、多くの病院においては、ほとんどの疼痛・疾患に対して保存療法、対症療法が中心であり、手術をしたとしても、それは結果を切り取っているだけに過ぎないため、根本的な治療とは言えないのが現状です。
 
さらに、多くの患者は急性または亜急性の打撲、捻挫、挫傷のみしか独自に保険請求出来ないはずの柔道整復師が、整骨院において違法に肩こりや腰痛をマッサージ施術で対応し、日常的に不正な保険請求をしているという事実に気がつかないまま、「整骨院は安いから」と言っては日々保険治療を貪っています。整骨院における不正請求は年間で数千億円にものぼるであろうと言われており、日々増大する医療費は、結局は患者が自分で自分の首を絞めているような構図になってしまっているのが実情です。
 
鍼灸業界においても同様に、現在は多くの鍼灸師や鍼灸団体が療養費の取り扱い(=保険治療)を良いものとして、何も考えずにゴリ押ししているように思えてなりません。しかし、当院では、上記の理由につき、療養費つまりは保険の取り扱いについては未だ慎重な姿勢を崩していません。したがって、当院においては時間制限が不要な自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)のみを取り扱いとし、治療の質を落とさぬよう努めています。