• HOME
  • >
  • 謎の頭痛を治す

謎の頭痛を治す

 
最近は遠方から来院する患者さんが沢山増えてきました。しかし、せっかく遠くから通って、それまであった疼痛や不快症状が完治しても、日常的なストレスが強く、それまでの生活に変化がなければ、また同じような病態が再発してしまうことがしばしばです。
 
そのため今回は、F県から遥々来院していた患者さんが、F県で活動している鍼灸師に当院と同様の施術をしてもらえるように、以下の資料を手渡しました。
 
以下の資料によって、今回のケースと似たような症状で悩み苦しんでいる患者さん、鍼灸師の一助となるかもしれぬという思いで、このページを公開しました。
 
患者個人の情報は最小限に伏せてあります。


考察と刺鍼法

ある日、自転車に乗っていた少年が自動車にはねられました。幸いにして大きな外傷は負わなかったもの、その後に激しい頭痛、聴覚過敏、幻視などが後遺症として現れました。病院に行っても原因不明かつ治療法がないと言われ、あらゆる治療法を試すも功を奏さず、少年は不登校になりました。親子で心中を企むほどに苦しんだそうですが、結局、HPをきっかけにして当院に来院しました。
 
初めに:K市近隣で活動する鍼灸師への一助となるべく、ここに私の一考察と刺鍼法を公開した。以下にその詳細を記したので、治療時の参考にどうぞ。


 
患者:Y君  H10年8月生まれ
 
初検時の主訴初検はH23年2月11日である。交通事故後遺症(自転車に乗っていて車にはねられた)による偏頭痛、聴覚過敏、幻視(幻聴)、閃輝暗点、背部痛。Q州で評判の良い病院や鍼灸院、整骨院などをハシゴしたが、一向に良くならない。
 
既往歴:特になし。
 
罹患部位:偏頭痛、聴覚過敏、幻視は頸部筋群および側頭筋の異常収縮によるものであると推察された。特に幻視は頸部筋群および側頭筋の異常収縮に起因する一時的な後頭葉および側頭葉病変と推察され、実際に頸部筋群、側頭筋に刺鍼することで完治した。特に、閃輝暗点と幻視は後頸部筋群の異常収縮に起因する一時的な後頭葉病変であり、頸部に刺鍼することで完治した。さらに、頸部の硬縮に伴い、TH1~TH5付近の、脊柱背側の筋群にも強い収縮がみられ、それらによって背部痛が引き起こされていたと考えられる。
 
経過:最も強く硬縮していたのは側頭筋で、次に、上背部の筋群に中程度の硬縮がみられた。頸部背面および側面の筋肉はそれほど強くは収縮していなかったが、僧帽筋下降部から中斜角筋までを目安に刺鍼した。週1回のペースで5回ほど治療し、完治した。
 
予後:15ヶ月ほど経過した後、偏頭痛が再発。H24年6月5日に再診。側頭筋と上背部の筋肉が中程度に硬縮しているだけで、頸部は比較的軟らかさを保っていた。初検時のような硬さは無い。再検時は3日間に分けて施術した(患者への刺激量を考慮)。1日目の刺鍼は側頭筋と頸部のみとし、痛みは5割程度まで減る。2日目の刺鍼は側頭筋と上背部のみとし、痛みは2割程度まで減り、音過敏は完全に消失する。3日目はこめかみ部分のみが少し痛むだけになったため、仰臥にて太陽穴から和髎穴へ向けて横刺、斉刺(透刺)する(2寸の5番を使用。硬い場合は8番でも良い。)。3日目の治療後には全ての不快症状が消失したため、以後は経過観察とした。
 
初検時の施術:要画像参照。再検時の施術については上記参照。
① 側頭部は、側頭筋を削ぐようにして筋腹に1本、その両脇に1本ずつ横刺する。鍼の長さは3インチとし、太さは5番または8番を使用する。刺入点は耳尖から2横指ほど後方を目安にして、側頭筋全体を弛めるようなイメージで刺鍼する。
 
② 頸背部で使用する鍼は全て1寸6分の長さ、太さは3番または5番とする。天柱、風池、完骨は全て単刺で、同側の眼に向け、眼に得気が行くように刺鍼する。これらの経穴の深部には脳幹が位置するため、決して深く斜刺してはならない。その他の頸部、背部も全て皮膚面に対して垂直に単刺し、椎体または横突起に、鍼尖が当たるようにする。特に、TH2付近から下部は肺が迫っているため、必ず鍼尖部が椎骨に当たるようにしなければならない。また、頸部背面は、頸長筋の上部から筋腹へ向かって刺入しながら、背部へと移動する。背部の刺鍼部位は、膀胱経の1行線上の兪穴と、華陀穴または夾脊穴の間の幅を限度とし、脊柱起立筋浅部を貫き、胸棘筋まで到達させるイメージで刺鍼する。頸部への刺鍼は置鍼を基本とし、雀啄など刺激を増幅させるような手技は行ってはならない。当然ながら、パルスなどによる通電も厳禁である。
 
③ 静かに刺入した後は、患者に暈鍼(吐き気やめまい)などの迷走神経反射がないか確認し、あっても数分で治まればそのまま30~35分置鍼する。反射が酷く出て、喉の渇きや吐き気、グルグル眩暈を訴える場合はすぐに抜鍼する。水を飲ませてから仰向けに寝かせておけば10分ほどで回復するが、このような反応が出た日は刺鍼を中止する。治療は5~7日ごとを基本とし、疼痛や不快症状が消失したら治療は中止し、その後の経過を観察する。
 
 
*頸部および背部への施術は大変な危険が伴うため、熟達していない者は刺鍼しないほうが良いでしょう。