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  • 「当院はディスポ鍼なので安全です」には注意

「当院はディスポ鍼なので安全ですよ(゜⊥゜)」は実は危険?

初めて鍼灸院へ行く場合、まず患者さんが気になるのは
 
①痛いか否か
②ディスポ鍼(使い捨て鍼)か否か
 
の2点でしょう。まず、①については「痛くない鍼」は硬い筋肉にちゃんと鍼が当たっていない証拠なので、効果が期待できません。ですので、痛い部位にしっかりと鍼を打ってくれる鍼灸院を選びましょう(凝っている筋肉にちゃんと鍼が刺さると、ズーンという独特の感覚があります)。そのためには、長鍼(≒中国鍼)を使える鍼灸師がいる鍼灸院を選ばなければイケません。
 
そして、②についてですが、鍼治療における衛生面の安全(『当院の衛星管理について』LinkIcon)は、使用鍼の滅菌状態だけではなく、その他の使用器具の滅菌状態や術者の手指および患部の洗浄・消毒状態によって左右されます。つまり、たとえディスポ鍼を使っていようとも、鍼皿(鍼を置くトレー)が滅菌してなかったり、鍼管(鍼を打つ筒)が他の患者と兼用(案外多い)であったり、術者の手指や施術部位がしっかりと消毒(かなり多い)されていなければ、その鍼治療は安全であるとは言えません。実際、公にされない鍼の事故においては、肺への刺鍼による気胸に次いで、術者の消毒不徹底ゆえの事故も報告されており、鍼の滅菌しか徹底していない鍼灸院は、安全とは言えないのです。
 
私は学生時代から多くの臨床現場に出向き、先人が実際に治療する姿を観察してきました。それゆえに、彼らが反面教師となって、今の私の治療スタイルが出来上がったわけですが、とにかく、今の鍼灸業界は安全とは言えないケースが少なくありません。したがって、『ディスポ鍼を使っていますから安全です』という宣伝文句を鵜呑みしないように注意しなければなりません。
 
我々鍼灸師を拘束する「あはき法(あんまマッサージ・はり・きゅうに関する法律)」の第六条には「消毒義務」という項目があり、本来、消毒を徹底していない鍼灸師は法における処罰の対象となります。しかし、最近流行りの「優しい・痛くない鍼(=浅鍼)」では、ほとんど皮膚の表面にしか鍼を刺さないため、血管まで鍼が達するケースが少なく、消毒義務を怠っていても自ずと感染事故を免れるようになっているようです。この現状には鍼灸師も患者も気がついていないですが、術者が消毒義務を徹底していないのに感染事故が起こらないのは不幸中の幸いです。しかし、人間には、地球の外周2周半もの長さの血管が縦横無尽に張り巡らされているのであり、浅い鍼であっても鍼についた雑菌が血管まで達し、重篤な感染症を起こさないとも限りません。特に、免疫機能が著しく低下している現代人にとっては、よりリスクが高くなると考えられます。結局、ディスポ鍼を使っていても、術者の手や患部に付着している細菌が完全に除かれていなければ、鍼尖や鍼体に付着した細菌が皮膚から血管に達する可能性は十分にあります。まぁ、ほとんどの患者においては、免疫機能が正常に機能してそれらの細菌も簡単に排除されるでしょうが、最悪の事態を考え危機管理を徹底していない場合は、いつ事故が起っても不思議ではありません。
 
そもそも、鍼は体内組織まで侵入するものであり、鍼灸治療は安全管理を徹底されるべきものであります。しかし、現在の厚生労働省や保健所の在り方が、他の役所同様に到底満足出来るものでないことを証明するように、あはき法は昭和初期(S22年)からほとんど改変されないままです。また、日本で毎年のように刺鍼事故による類似死傷者が減らないのは、役人の怠慢であると私は考えていますが、何よりも鍼灸師の怠慢の方が目立つように思えます。私自身も鍼灸師として自省すべき点・改善すべき点は、気がついた限りは自ずから変革しているつもりですが、一国一城の主となって己の流派や手技に固執しているオカタイ鍼灸師や、患者そっちのけでカ〇ト臭がただよう怪しげな鍼灸団体にドップリ浸かっている鍼灸に良い影響を与えようと思っても、中々難しいものがあります。
 
したがって、鍼灸師自身がアクションを起こすのを待っていたら一向に鍼灸業界は変化するこはないでしょう。ゆえに、鍼灸院を訪れる患者自身が鍼灸業界のこの危うき現状に気がつき、正しき行動をとることが重要になります。そうでないと、今後も刺鍼事故による死者は一向に減らず、刺鍼事故は業界の隠蔽体質によって、再び闇に葬り去られてしまうでしょう。
 
「得気」の重要性