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裸で尻はからげられぬ。

学生が知らない鍼灸業界の真実

細菌は、いや、最近は鍼灸師がエステティシャンを兼ねたり、「刺さない」鍼を喧伝する輩が増えてしまい、「本格的」な鍼灸治療を施す鍼灸師が激減してしまっているようである。私は、うちに来る患者さんには必ず「鍼灸治療を受けるのは初めてですか?」と確認するのだが、多くの患者さんが「本格的な鍼は初めてです。」と答える傾向にあるのは、いち鍼灸師として鍼灸業界における危機感を感じざるを得ない。
 
それでも、最近は西洋医学が行き詰まりを呈してきたせいか、「東洋医学(私はこの用語を使う輩は信用しない)」に注目があつまり、鍼灸師を目指す人々もチョコチョコみられるようである。鍼灸学校が規制緩和で乱立するようになってから、鍼灸師免許を取得した人は現在15万人以上いるとされる。
 
だが、実際、純粋に鍼灸治療だけを業として生計を立てている人は5%にも満たないと思われる。実際、私の同期で開業して成功している人はほとんどおらず、鍼灸関係の仕事から離職するか、前の仕事に復職するか、鍼灸学校の教員免許を取得して臨床から離れるか、整骨院で柔整師に雇われて鍼灸治療の真似事をするか、鍼灸治療の他に整体・エステ・健康食品販売・カイロ・マッサージを組み合わせるかなどで、鍼灸治療だけで食っている人はほとんどいないのが実情である。
 
本当に鍼灸師としての腕があれ「掛け値」の無い鍼灸治療だけで食っていけるものである。よって、鍼灸師として手腕不足だったり、鍼灸治療に自信が持てていなかったりすると、自ずと鍼灸院経営が「多角化」しがちである。気がついたら、鍼灸治療ではなくマッサージがメインになっていたり、保険治療がメインになっていたり、出張・往診治療がメインになっていたり、物品販売がメインになっていたり…。
 
つまり、鍼灸師として純粋に鍼灸だけを業として暮らしていくのは、余程の腕と、人徳、仁徳がないと困難なのである。私が講習会などで教えてきた経験では、この業界には努力ではカバー出来ない「何か」が必要なのは真実である(他の業種でも同じだろうが)。特に、鍼灸師の使う道具は主に鍼だけであり、それゆえ「匠」の技が要求され、「やる気」だけではどうにもならない部分があるのも現実なのである。
 
鍼灸学校では仕事の斡旋はしてくれないし(校内の掲示板に求人広告が貼ってあるくらい)、基本的には卒業したら親身に就職や開業の相談に乗ってくれることもほとんどない。また、鍼灸学校では基本的に国家試験に通過するためだけの手伝いをしてくれるだけなので、卒業後の進路は自分で決め、そして独力で道を切り開いて行くしかない。まぁ、まずは学生を国家試験に合格させるのが専門学校の責務であり、当然と言えば当然なのかもしれないが…。だが、専門学校で少しの座学と、役に立たぬ臨床を学んだだけでは、実際の臨床現場を切り抜けられない(「治療」が出来ない)のも現実で、400万円前後の大金を支払って専門学校を卒業し、その上、国家試験と免許登録に数万円の金を費やしても、それが無駄に終わり、路頭に迷っている鍼灸師が非常に多いのも現実なのである。
 
最近では少子化の影響や不況の影響もあってか、鍼灸学校の経営悪化も目立ってきているようである。ここ5年くらいの間に、すでに定員割れする学校も出てきており、私立大学と同様、鍼灸学校も学生の取り合いが激しくなってきているフシがある。
 
今後も鍼灸学校としての存続を願うならば、最も必要なことは学生の就職・開業・独立などに関するフォローであろう。鍼灸学校の「バブル期」には、学生は放っておいても舞い込んできたのだろうが、これからは学生が卒業後に鍼灸師として無事独立し、安定した生活を送れるように、少しでも支援するような仕組みを作らねば、鍼灸学校の存続は困難であろう。今までのような受験一辺倒のカリキュラムでは、鍼灸師として社会の役に立てぬと失望し、自責し、無念な想いを抱えたまま鍼灸業界から離脱してしまう人々を増やしかねない。鍼灸学校に言わせれば、「そんな暇など無い」などと言い訳するであろうが、一般教養科目(特に体育・社会学など)の既存カリキュラムや、実技授業の質(臨床経験の少ない鍼灸師が教えているのがそもそも問題である。→外部から「治す」鍼灸師を招いて授業外で講習会でも行うべき。また、「インターン制度」が確立されていないのも大きな問題である。)を見直せば、それらに関する時間を大幅に捻出することは不可能ではないはずである。