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  • 恐怖!あなたの知らない「美容鍼」

美容鍼(美顔鍼、美顔針、美容針)の真実

 
 
西洋医学を真面目に勉強している鍼灸師であれば、現在、日本で流行している美容鍼灸の手技や経営方法について、釈然としない感じや、漠然とした不信感を抱いているかもしれません。
 
たまに「先生は美容鍼はしないんですか?」と患者さんから質問されたりしますが、私は今後もやるつもりはありません。その一つの大きな理由としては、美容鍼はどんな方法でやろうとも強く実感出来るような明白な効果を導くのが非常に困難である、ということです。「それはあんたの腕が悪いからじゃないの?」なんて言う人もいるかもしれませんが、そういう人は無視しておきましょう。一応言っておきますが、私は鍼灸学校時代の実技の授業で、鍼を刺す時に使う鍼管のテクニックを全クラスメイト同士で競ったことがありました。片手挿管という技術で競うのですが、まだヒヨコ的な学生同士ですから、1分間に出来る回数はせいぜい多くても8回(7.5秒に1回)くらいです。片手で鍼を管に通して皮膚に刺す動作をひたすら繰り返すのですが、慣れていないと器用な人でも10回(6秒に1回)くらいが限度です。その時は最高で11回(5.45秒に1回)出来た生徒がいて、教員も生徒もすごく驚いていましたが、多く出来た学生が誇らしげにしている様子があまりにもアホらしいので、私は13回(4.6秒に1回)出来たにも関わらず黙っていました。ちなみに、今なら眼を閉じていても2秒はかからずに片手挿管出来るので(約1.5秒で鍼を鍼管に入れてスタンバイ出来ます)、全動作含めて3秒としても1分間に20回以上は軽くこなせるのではないかと思います。また、非常に難しいと言われる「浮きもの通し(水に浮かべた果物などにほとんど揺らさず短時間で鍼を刺す)」においても、私は鍼灸学校の授業にて初めて挑戦しましたが、初回でスンナリと成功させました(クラスメイトの大半は苦戦していました)。
 
私はこれまで多くの鍼灸師に北京堂的な刺鍼法を教えてきましたが、私よりキャリアが長い鍼灸師であっても、とにかく刺入に時間がかかったり、患部へと的確に刺せない人が多いということを実感しました。例えば大腰筋に3寸の5番で左右10本ずつ合計20本を刺すとしても、初心者で30分くらい、慣れた人でも10分くらいはかかりますが、私は3分くらいあれば余裕かつ的確に患部へ刺鍼することが出来ます。
 
そんなわけで、おそらく、そういう無駄に年齢を重ねただけの老害的鍼灸師や、ゴリッパな肩書きに執着したアヤシイ鍼灸師、自称ゴッドハンドな鍼灸師よりは、私の方が技術的にも格上だと思われますし、美容鍼をやったら儲けられそうな気もしますが、とにかくやる気はありません。一つの理由は先に述べた通り、美容鍼そのものが科学的論拠に乏しく、未だ客観的かつ明確な効果が見られ難いということにあるのですが(論拠は下記で述べます)、もう一つの理由は可能な限り、より多くの疼痛性疾患(運動器系疾患)を治したい、という思いがあるからです。つまり、美容の専門家は世の中にはゴマンといるわけですし、確実に効果を出す美容専門の医者も方法も腐るほど存在しているわけです(フラクショナルレーザーやジェネシスレーザー、YAGレーザーなど)。そんな中にあって、法外な料金を取ってまで、美容鍼で銭ゲバのように患者を集めようとは思いません。そもそも、美容鍼専門の鍼灸院において、それだけの高い料金を支払い、それ相応の対価を得ることが可能なのでしょうか。レーザー治療やピーリング治療にかかる数倍の料金を支払って、それらの数倍の効果を得ることが出来ている患者は本当に存在するのでしょうか。
 
もちろん、効果が得られないことが前提の慰安的な美容鍼であれば、通って効果が見られなくても問題はないかもしれません。しかし、「美容鍼で法令線やシミを消します!」とか、「美容鍼の創傷治癒によって美肌にします」とか「美容鍼でシワやたるみをとって小顔にします!」などと喧伝しつつ、何らの効果がみられないにも関わらず「いつかは効果が現れますから!」などと嘯(うそ)いて、延々と患者を通わせ続ける美容鍼専門の鍼灸院が存在することが問題なのです。つまり、美容鍼の効果などあろうがなかろうが、とりあえず一見さんでも何でもかんでも、患者が集まって儲かりゃいいなどと確信犯的に営業し続ける鍼灸師がいることが問題なのです。これは美容鍼以外でも、日本の一部の鍼灸流派にも当てはまりますが、日本鍼灸界の由々しき実情です。例えば難聴や耳鳴り専門鍼灸院だと謳っていながら、全く治さず、ずっと同じ方法で患者を騙し続け、営業している鍼灸院も実在します。
 
そんなことを考えると、効果があいまいで、明確な変化を実感できないような、一部のアヤシイ美容鍼などに大枚はたく余裕があるなら、実績のある美容専門の皮膚科にでも通った方がよほど有益であると私は思います。まぁ、それでも美容鍼をやりたいという鍼灸師は、最低限もっと料金を引き下げて営業すべきだと思います。体鍼(美容鍼以外の鍼治療)やマッサージの一般的な相場が10分1000円程度であるのに、コストがほぼ同じであっても、顔に鍼を打つだけで10分10000円以上などというのは、理解しがたい高額な料金設定であり、暴利を貪っているように思われます。とにかく、巷の美容鍼は「お値段異常」が多いように思われ、ただ美容専門鍼灸師の儲かれば良い的に思われる構図には開いた口が塞がりません。
 
世の中には慢性疼痛を抱え、医師に失望している患者が多く存在します。今の医療は日進月歩であるとは言っても、ある部分では限界に来ています。例えば、誰もが経験している慢性頭痛や腰痛でさえ、多くの病院では未だに完治させることが出来ません(最近流行の頭痛外来で全く良くならなかったという患者が当院には多数来院しており、ほとんどの人が完治しています)。日本だけでも、その潜在的な患者数は数百万から数千万人に上ると推察されますが、実際に何らかの治療で完治させることが出来た人は数%にも満たないでしょう。慢性疼痛を抱えた患者の大半は、街にあふれる脱法的マッサージや、一部の整骨院での違法的保険治療によって、その痛みから逃れようとしています。しかし、そんなことをしていても完治する可能性は低いと考えられ、むしろ日常的な不正請求によって医療費が増加し、一般庶民への経済的負担が増すばかりです。医療費の負担が増えればそれだけ家計は苦しくなるわけで、疲れた体を押してまで働かなければならぬ、という悪循環に陥るわけです。
*「受領委任」というシステムが来院日数の水増しなど、不正請求しやすくさせているようです。こういう愚の骨頂的システムを作った役人も罪深いでしょう。厚労省などはこのような不正請求の取り締まりには見て見ぬフリをしているように思え、一向に不正が減る気配はありません。

 
 
美容鍼からかなり話がそれてしまいました。基本的に鍼は細くて長いものほど扱いが難しいのですが、美容鍼で使うような1寸程度の短い鍼でしたら、素人同然であっても容易に扱えると思います。なんせ、鍼管に入った鍼を皮膚に当てて、指でポンと叩くだけですから(実際に最近は簡単に刺入出来るワンタッチの鍼が開発されています。鍼の種類によっては鍼管を使わなくともほぼ無痛で刺入することも可能です)。前述したとおり、現在の多くの日本の美容鍼においては、テクニックなど必要ないに等しいと思われ、技術の差など起こり得ないと私は考えています。また結局のところ、現時点ではフラクショナルレーザーなどのように、1回で数千発の微細な傷を皮膚深部に作ることができる最新のレーザー治療に比べると、1回の施術で50~100本程度しか刺さぬような鍼治療では劇的な創傷治癒を起こすのは困難であると推察されます。ゆえに、どのツボを使おうが、奇抜な刺鍼法を用いようが、切れぬ刀を振り回しているようなものであって、実際の効果も大金を払った割に満足出来なかったというパターンが少なくないようです(最近は鍼尖を丸くした鍼が美容鍼専用品として製品化されています)。その証拠に、例えば最近、美容皮膚科で導入されているダーマペンは、針尖が鋭利な針で角質層を貫き、表皮、基底層、真皮まで穿刺することで基底層に存在する繊維芽細胞などを確実に傷つけ、ヒアルロン酸やコラーゲン、ケラスチンなどを産生させ、皮膚の状態を改善させることが出来るようです。確かに、フラクショナルレーザーやダーマペンで皮下2mmほどの深度に穴をあければ、ある程度は確実な効果が見込めるでしょう。しかし、麻酔なしで1度に数千本の美容針を打つことは労力を考えると不可能に近いですし、なにより患者にとっては激痛が連続するでしょうし、そんなに長時間は耐えられないでしょう。そもそも鍼灸師単独では医師法の関係で麻酔は使えませんから、これは現実的ではありません。
 
現代の鍼灸師がやるべきは、医師が治せぬ慢性疼痛性疾患や難病の類の研究と実践であり、様々な治療が確立している美容法に触るべきではない、と私は考えています。体幹部への刺鍼はともかく、顔への刺鍼による美容効果というものは、医学的かつ科学的な論拠に乏しく、誰にでも同じように美容鍼が効くというような施術の再現性の証明や、明白かつ確実な実証が未だ提示されていないようです(2014年現在)。その証拠に著名な美容専門鍼灸院であっても、HPには美容鍼が科学的に効くという明白かつ明快な論拠が示されていない場合がほとんどで、ただ漠然と美容鍼の効果を示しているに過ぎないケースが少なくありません。ゆえに、多少なりとも医学的な知識があり、客観的かつ冷静に物事を分析出来る人であれば、美容鍼専門鍼灸院のHPを見ると多くの場合、疑念を抱かずにはいられないこともあると思います。実際に当院へ「他の鍼灸院で美容鍼の施術を受けたが全く効果がみられなかった」というような相談も少なからず報告されています。そういうわけで、明確な効果を出せていないにもかかわらず、確実な美容効果を謳って患者を集め続ける鍼灸師に、私は良い感情は持てないのです。
 
美容鍼における、その他のリスクについては下記で詳しく述べますが、日本の鍼灸師は医学的な知識と教養が欠如したまま開業し、「先生、先生」と呼ばれて己の城にふんぞり返っているパターンが多いですから、鍼灸師の言うことを鵜呑みにしていると、後悔するやもしれません。
 
 
 

美容鍼の科学的エビデンスはどこに?

美容鍼はうまくやれば、低コストでボロ儲け出来ます。その証拠に、美容鍼でいかにして儲けるかという鍼灸師向けの高額セミナーなどが、定期的に開催されており、業者向けの営業メールなどが頻繁に送られてきます。一部の鍼メーカーも美容鍼のブームに便乗し、美容鍼専用の鍼を大々的に生産しています。実際に、鍼灸学校へ通う前は社会的弱者同然だったような人が、国家免許取得後に美容鍼で一儲けして、メディアなどでセレブ気取りでふんぞり返るのは、もはや珍しいことではありません。しかし私は以下に詳述する通り、多くの美容鍼が患者に対して値段ほどのメリットがみられなかったという経験上の理由や、美容鍼よりも優れた医学的な美容法が日々進化していること、例えば美容皮膚科でレーザー治療、特にジェネシスレーザーやフラクショナルレーザー、フォトブライト治療、ピーリング治療などを受けた方が確実に線維芽細胞が刺激されて、コラーゲンが産出されやすいことなどを実体験した上で、「明確な効果が表れにくく、科学的根拠に乏しい美容鍼で悪銭を稼ぐべきではない」、という結論に達しました(当然ながら皮膚科医の技術も様々です。また、レーザーやピーリングなどで短期間に皮膚を刺激しすぎることによって、細胞の癌化や、炎症後色素沈着などが起こる可能性もあります。ゆえに、それらのデメリットを的確に見極め、メリットを最大限に享受できるよう、適切かつ適度な刺激量、治療間隔で施術を受けるのが良いと思います)。
 
とにかく、今の有名どころの美容専門鍼灸院は暴利を貪りすぎている感があります。美容針に興味を持ち、ネットなどで良い美容鍼専門の鍼灸院はないかと探したことがある人は、その値段に驚いたことがあるかもしれません。シワやシミ、赤み、肌荒れなどに、1回の施術で実に効果がみられると言われているジェネシスレーザーやフラクショナルレーザー、YAGレーザー、フォトフェイシャル、ケミカルピーリングだと、美容皮膚科でだいたい1回の相場は10000~20000円くらいです。しかし、シワやたるみ、法令線、肌荒れなどに効果があると謳っておきながら、数回の施術をしても、ほとんど効果がみられないような美容鍼であっても、1回の相場は20000~60000円くらいのようです(最近は比較的値段を下げている鍼灸院もあるようです)。対費用効果というか、コストパフォーマンスを考えると、美容皮膚科へ行った方がメリットは大きいのではないかと思います。確かに、料金に見合っただけの結果が得られるのならば、2万でも5万でも良いとは思いますが、確実な効果を謳っているにも関わらず、高い料金を支払ったのに全く効果がないようであれば、消費者生活センターへ相談した方が良いかもしれません。
 
前述したことが信じられぬとお思いでしたら、ご自分で実体験されてみると良いでしょう。今の美容皮膚科は美容鍼灸など足元にも及ばぬくらい進化していて、先に述べたレーザー治療の他にも、フォトフェイシャルなどの光治療、水圧を利用したハイドラフェイシャル治療、ピーリング治療など、とにかく科学的にも効果が明らかな施術が色々あります。当然、前述したような、レーザーで皮膚を刺激しすぎることによるデメリットや、ピーリング液の濃度が不適切であった場合のデメリットなどは事前に考慮しておく必要があります。
 
全く効果を実感出来ないにも関わらず、熱心に通い続ける患者が哀れでなりません。たまに当院へ「○○という有名な美容鍼専門の鍼灸院で施術を受けているが、一向に効果を実感出来ません。しかし、しばらく通えば効果が実感出来るようになりますから根気強く通って下さい、と言われました。どう思いますか?」とか、「美容鍼をした後、顔に違和感がずっと残っています。そのことを院長に話してもうやむやにさせられて取り合ってくれません」とか、色々電話が来るので困ってしまいます。
 
とにもかくにも、本来、鍼の最も優れ、傑出した作用は副作用のない鎮痛作用であることは疑いのない事実でしょう。実際に、ペインクリニックや最近流行の頭痛外来などへ半年以上通っても全く好転しなかったような患者が、当院の鍼治療によって数回で完治または好転する様子を何度も何度も見ていくうちに、まずは鍼でしか治せない疼痛に悩む患者を優先して救うべきだ、という思いを強く抱くようになりました(←アヤシイ鍼灸院で残念な施術を受けてきた人には理解出来ないかもしれませんが…)。前述したとおり、現在は美容鍼よりも科学的で、明らかに優れた美容法があります。また、世の中には鍼でしか治せない患者が何百万、何千万人と潜在的に存在するはずで、的確に刺鍼すればそういった患者を救えるのだという手ごたえを実際に何度も経験するうちに、私は美容鍼などやろうという気さえ起らなくなってきたのです。鍼灸師は15万人(実際に稼働しているのはこの半分くらいらしい)もいるのに、本当に効く鍼灸治療を提供している鍼灸師は極少数らしく、当院にも地元の鍼灸院はどこもダメだったとかで、遠方から来院する患者が後を絶ちません。確かに確実に効果を出す鍼灸師も存在するようですが、まだまだ少ないようです。
  
日本の鍼灸師は美容鍼灸で確実な効果が出せないのであれば、慢性的な疼痛に苦しむ患者を一人でも多く救うべく、疼痛専門鍼灸に専念すべきだと日頃から考えています。しかし、多くの鍼灸師は簡単に稼ぎやすい美容鍼灸に憑りつかれてしまって、真の患者のニーズを想う力が欠如してしまっているケースが多いようです。何度も言うように、美容鍼に勝ると思しき代用品はいくらでもあるわけですが、疼痛専門鍼灸に勝る術は今のところ存在しないと私は確信しています。ゆえに、ドクターショッピングに疲れ果て、つらい症状を好転させるべき方法に出逢えぬまま、路頭に迷っているような患者の力になれるように、今後はそういう方向性で鍼灸の道を歩んでゆくべきだと思うわけです。500万円あまりの大金を専門学校に費やして、国家免許取得後も患者を治せず、結果的に喰うために美容鍼へ走る鍼灸師も多いようですが、将来的には当院のような疼痛専門鍼灸院の需要が増え、飽和化が増々進む美容専門鍼灸院はいずれ頭打ちとなり、値下げ競争が激化したのち、廃業を余儀なくされる美容系鍼灸院が増加するであろうと、私は予測しています
 
確かに私も鍼灸師になりたての頃は、アメリカのセレブの影響で日本でも火が付き始めていた美容鍼に関心を抱いていたわけですが、世界でも類まれな、超アウトローかつ最も結果に再現性のある治療法に出逢ってしまったゆえ、美容鍼への関心は日に日に薄らいでゆきました。日本でも欧米でも、最近は「優しい鍼」が主流で、当院のように短期間で確実に治す鍼灸院は少ないようです。当院の鍼は痛いですが、とにかく巷の鍼灸院に比べると、断然に治癒率が高いようです(ペインクリニックや整体院、病院、カイロ、鍼灸院など様々な治療院を渡り歩いた多くの患者が証言しています。ま、私も神ではないので100%治せるわけではないですが。)。長々と前述したとおり、そんなこんながありまして、私は美容鍼などには一切関わらず、鍼灸師が最も世の中のお役に立てると思われる疼痛専門鍼灸を極めよう、と日々精進するようになりました。現在、鍼灸師は日本に15万人以上存在すると言われていますが、私のような考えを持つ人はほとんどいないようです。とても残念なことですが、今の日本の鍼灸業界は政界なみに老害が蔓延っているゆえ、私一人の力ではどうにもならぬのが実情です。今後、賢明な鍼灸師が正しき道にて研鑽を積み、疼痛に悩む患者を1人でも多く救えるようになることを願っています。
 
 
 

美容鍼のリスクと副作用

最近は、鍼と言えば美容鍼専門鍼灸院ばかりがクローズアップされがちで、当院のような堅実かつ実直な疼痛専門鍼灸院が表に出ることはあまりありません。とにもかくにも、マスコミに踊らされた大衆は猫も杓子も美容鍼というという感じですが、巷では美容鍼のアヤシイ効能ばかりが取り沙汰されるだけで、そのリスクについて語られることは皆無に等しい状況です。美容鍼におけるリスクの詳細については下記にて項目別に記しましたが、まずは顔面部において最もリスクが伴う刺鍼部位について述べておきたいと思います。
 
ちなみに、鍼灸師は一応は国家資格であるため、専門学校で解剖学を一通りは学んでいます。しかし、医学生が医学部で学ぶ解剖学に比べると、鍼灸学生が鍼灸学校で学ぶ解剖学は遥かにお粗末な内容であると言えます(つまりは概論のみ)。したがって、卒業後など、独学でコツコツと解剖学を勉強しない限り、多くの鍼灸師は解剖学についての正確かつ詳細な知識が大幅に欠落しているケースが少なくないようです
 
現在の日本鍼灸の主流はいわゆる経絡治療であり、数本の鍼を浅くしか刺さない「ユル鍼」ですし、昨今になってようやくエビデンスとか科学化とか叫び出しているわけではありますが、未だに鍼灸治療における解剖学的要素というモノが排除され、必要とされない如き様相を呈していますから、正確かつ実践的な解剖学的知識が無くとも鍼治療を行えるようになってしまっているのが、現在の日本鍼灸界の忌々しき実情であるわけです。ついでに言えば、現在の日本の鍼灸治療においては、多くの場合、詳細な解剖学的および最新の医学的知識の必要性が排除されているがゆえに、誤刺による類似した刺鍼事故が繰り返されているのだと推察されます。
 
例えば、鍼灸学校で学ぶ「はりきゅう理論」というモノがありますが、中国の教科書などに比べると、教科書では刺鍼事故や鍼の禁忌についてはほとんど触れられていないに等しい内容です。一応は「リスク管理」という項目を設けて10ページ程度にまとめられてはいますが、マトモな鍼灸師からみれば、その内容はかなりお粗末であることがわかります。鍼の本場中国では、かれこれ30年くらい前から刺鍼事故についての本が多数出版されていて、「刺針事故」関連の本はもちろん、現在では「危険穴位臨床解剖学」などといった実践的な本も出版されています。一方、日本においては、浅野周先生が翻訳した刺鍼事故の本以外、特にこれといった本は出版されていません。一応は「鍼灸治療における感染防止の指針(医歯薬出版株式会社)」という本が出版されてはいますが、内容的にはまだまだ十分とは言えないように感じます(衛生管理についての項目はまぁまぁまとまっているとは思いますが)。
 
ちなみに、美容鍼は副作用がないとか、安全だとか騒いでいる御仁がおられるようですが、考えられる副作用・リスクは色々あります。とりあえずは、主なリスクを5つに絞って解説します。
 

1:手指消毒不良などによる有菌操作で細菌性ショックを起こす可能性
出血傾向または易感染傾向にある患者は顔面部の刺鍼によって酷い内出血が起こる可能性がある。また、施術者の手指消毒不良や刺鍼部位の消毒不良、その他鍼灸用具の滅菌不良などによって重篤な細菌性感染を引き起こし、最悪の場合はエンドトキシンが産生されて敗血症性ショックを起こす可能性がある。トキシック・ショック症候群はヒトの皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌が原因となるので、易感染傾向にある患者であれば、不適切な刺鍼によって容易に感染が起こり得る。実際に、「Gnatta JR, Kurebayashi LF, Paes da Silva MJ (2013). "Atypical mycobacterias associated to acupuncuture: an integrative review". Rev Lat Am Enfermagem 」によれば、「A 2013 review found (without restrictions regarding publication date, study type or language) 295 cases of infections were reported, mycobacterium was the pathogen in at least 96%. Likely sources of infection include towels, hot packs or boiling tank water, and reusing reprocessed needles.」と記されている通り、アメリカでは2013年に明らかになった刺鍼による感染事故だけで295例あったと言われている。日本ではディスポ鍼を使っていれば安全だと盲信している鍼灸師や患者が多いが、実際には「towels, hot packs or boiling tank water, and reusing reprocessed needles」などから感染するリスクが高いと言われている。日本でも、特に散見されるのは施術者の手指消毒の不徹底である。詳しくは私が記した別のページをご覧ください。「『当院はディスポ鍼なので安全です』には注意」「当院の衛生管理について」
*ちなみに、2011年に発表された「Ernst, E.; Lee, Myeong Soo; Choi, Tae-Young (2011). "Acupuncture: Does it alleviate pain and are there serious risks? A review of reviews"」によれば、2000~2009年の間に95件の刺鍼事故が報告されており、そのうち5件で死亡事故が発生したと記されている。中国や欧米では過去の刺鍼事故について、このようなレポートが公表されているわけだが、日本では刺鍼事故がしっかりと検証されず、事後処理も適当で、患者も泣き寝入り、施術者が隠ぺい工作を図るなどの傾向にあり、刺鍼事故の実際のデータも明確に公表されていない。実際に、平和ボケした愚かな鍼灸師が漫然と施術しているケースが少なくない。また、日本の鍼灸学校においても、日本の様々な鍼灸団体においても、このようなデータが学生や会員に通知されたり、報告されることは稀である(私の経験では見たことも聞いたこともない)。ちなみに、某鍼灸学校では教員が授業中に、事故を起こした時には患者に大金を渡して事故を隠ぺいしましょうと語っていたことがあった。このように、日本では、危機管理に欠ける鍼灸師が少なからず存在しており、年々類似した刺鍼事故が繰り返されていると推察される。前出した「Ernst, E.; Lee, Myeong Soo; Choi, Tae-Young (2011). "Acupuncture: Does it alleviate pain and are there serious risks? A review of reviews"」には、「The most frequent adverse events included pneumothorax, and bacterial and viral infections」とも記されている。

 

2:ディスポ鍼に関連するシリコンオイルとEOGによる害
現在売られている鍼の大半にはシリコンオイルが塗布されており(ノンシリコン製品は少ない)、そのような鍼を顔に刺したならば、シリコンが皮下に残留するか、体内へ取り込まれて臓器、細胞、脳を犯す可能性がないとは言い切れません。まず、長期間使用すれば、少なからず肝臓や腎臓に何らかの影響が出る可能性がある。患者によってはシリコンによってショック症状を起こす可能性さえ否定出来ません。シリコンは体内に吸収されないから安全だとか喧伝されいていますが、100%そう言い切れるものではありません。また、吸収されずに体外へ排泄されるから安全だとか騒いでいる愚者もおりますが、化学物質や毒素が体内に入ればそれだけ細胞はダメージを受けるわけで、それらを処理する過程で肝臓や腎臓、その他の臓器にも多大な負担がかかり得ます。現代ではただでさえ、その他の薬害や食品添加物の害、PM2.5などの大気汚染物質、放射線などの害が地球上に溢れ、避けようにも日々それらの害に晒されているわけですから、たかだか鍼に塗布されている微量のシリコンオイルであっても、人によっては命取りになる可能性が全くないとは断言出来ないでしょう。例えば、最近でも漢方薬である三七の飲み過ぎ薬物性肝障害を経て死亡したとか(中国での報道)、サプリメントの飲み過ぎで薬物性肝障害になったとか、ラテックスゴムでアナフィラキシーショックを起こしたとか、給食の最中にとある食材でアナフィラキシーショックを起こして亡くなってしまったなどというニュースがありましたが、とにかく美容鍼が安全だとか副作用がないなどと断言するには無理があります。さらに危険なのは、EOG滅菌されている鍼です。現在流通している、ディスポーザブル(使い捨て)の鍼のほとんどはEOG(エチレンオキサイドガス)滅菌が施されており、新品未開封の鍼にはEOGが微量ながらも残留している可能性があります。EOGの危険性(特に発癌性のリスクがある。詳しくは「エチレンオキサイドガス滅菌作業」「ガス滅菌とその安全性について」を参照。)についてはかなり前から指摘されていますが、その危険性について知っている鍼灸師は未だ少ないようです。上記リンクで山口大学医学部附属病院医療材料物流センターの井東光枝氏がEOG滅菌された医療材料を介して被害は起こりうる。ガスの毒性や物質表面に吸着する性質を利用して滅菌するのであるから、滅菌終了直後の被滅菌物には高濃度のEOが付着している。と述べていることは事実でしょう。ゆえに、当院ではEOGの害を出来るだけ避けるために、再使用可能鍼をメインに使っているのです(未使用鍼開封時に私も危険に晒される可能性があります)。しかも、当院ではシリコンオイルが塗布されていない商品をわざわざ独自に調べて取り寄せています(当院ではシリコンオイルが塗布された鍼は一切採用していません)。当院には稀に、ディスポ鍼だけで治療してくれと毎回鍼代を支払う患者が来院しますが、当院で使用している再使用可能鍼は全て個人別に分けて完全に滅菌して使っていますし、1年で廃棄・交換しています。また、その他の衛生面においても世界最高レベルを維持していると思われますから、細菌感染やウイルス感染にかかるリスクはゼロに等しいと思われます。何より、前述したシリコンオイルとEOGの害の方が怖いですから、毎度巷の美容鍼のように、ディスポ鍼を使うことはおすすめしていません。現在、美容鍼で使用されている鍼は、切皮痛と刺入痛、刺入の容易さを優先するため、かなりの高確率でシリコンオイルが塗布されていると推察されます。ついでに言えば、そのほとんどがEOG滅菌処理であると思われます。

 

3:刺鍼によって、内出血が止まらなくなったり、過度の炎症、ショック症状を起こす可能性
 鍼施術は、まれに軽度な内出血を伴うことがある。鍼治療で使われる鍼は直径0.16~2mm程度で、注射針に比べると遥かに細い。一般的に美容鍼で使用される太さは太くても直径0.3mm以下であり、一般的には、刺鍼によって血管をひどく損傷したり、出血が止まらなくなることはないと考えられる。しかし脳血管障害(脳梗塞、脳動脈瘤など)や、心疾患(心筋梗塞、狭心症、心室・心房中隔欠損症、ファロー四徴症など)、肺塞栓症、腎不全、高コレステロール血症、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、大動脈瘤などの病態が基礎疾患としてある患者に関しては、針施術は大きなリスクになる可能性がある。これらの疾患で処方されている薬には主に血液をサラサラにする作用があり、これらの薬を服用している場合、細い鍼を使ったとしても一度に沢山の鍼を打てば、施術後に出血が止まりにくくなったり、過度の炎症が引き起こされる可能性がある。また、刺鍼の刺激が過度であったり、患者が低血糖であるなど不安定な状態であれば、施術中に迷走神経脊髄反射など、ショック症状を起こす可能性がある。以下に一例として、血液をサラサラにする薬品名を列挙しておく。
 
・ワーファリン
・プラビックス(クロピドグレル)
・バファリン
・バイアスピリン
・エパデール
・オパルモン(リマプロスト、プロレナール)
・プレタール(シロスタゾール)
・アンプラーグ(サルポグレラート)
・セロクラール(イフェンプロジル)
・パナルジン(チクロピジン)
・コメリアン(ジラゼプ)
・ロコルナール(トラピジル)
・ドルナー(プロサイリン、ベラプロスト)
・ケアロードLA(ベラサスLA、ベラプロスト)
・ペルサンチン(アンギナール、ジピリダモール)
・プラザキサ(ダビガトラン)

*以上の薬以外にも、似たような作用を持つ薬があります。詳しくは医師にお尋ねください。

 
ちなみに当院では刺鍼によるリスクを可能な限り避けるため、初診時には以下の項目を患者自身にチェックしてもらっている。リスク回避について真剣に考えている鍼灸院であれば、この程度の項目をチェックさせることは当然であろうと思う。美容鍼をやるやらぬに関わらず、以下の項目によって、刺鍼前に最低限のスクリーニングを実施することは重要であろう。
 
・現在、ひどい頭痛や発熱、吐き気、めまい、動悸、息苦しさ、空腹感、疲労感、酩酊感などがある。 (はい・いいえ)

・現在、ステロイドホルモンの内服または投与、腎不全などによる腹膜透析や血液透析を受けている。 (はい・いいえ)

・ヨードやアルコール(エタノール)などを含む薬品を使用して不快感、ショック症状などを起こしたことがある。(はい・いいえ)

 
・先天性代謝異常または後天性代謝異常(糖尿病、高脂血症、甲状腺機能低下症など)がある。 (はい・いいえ)

・ヘビースモーカーで、1日1箱以上のタバコを吸っている。 (はい・いいえ)

・過去に冠動脈疾患、血栓症、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、高血圧症、高コレステロール血症、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、大動脈瘤、血友病などと診断され、現在、抗凝固療法を受けたり、抗凝固薬(ワーファリン、ヘパリン、ウロキナーゼ、アスピリンなどの抗血小板薬)や、血管を拡張させる薬(コニールやアイスラールなど)を常用している。 (はい・いいえ)

・現在、癌(がん)や癌の骨髄転移、白血病などが原因で放射線療法や化学療法を受けている。 (はい・いいえ)

・先天性心疾患(心室/心房中隔欠損症、ファロー四徴症、肺動脈狭窄症など)、肥大型心筋症、大動脈弁狭窄症、心不全、高血圧性疾患(高血圧性脳内出血、高血圧性網膜症など)と診断されたことがある。 (はい・いいえ)

・肝疾患、白血病、血友病、感染症などによる易感染傾向や出血傾向、免疫不全などがある。 (はい・いいえ)

・ペースメーカーや人工心肺などの体内植込型/装着型医用電子機器を使用している。 (はい・いいえ)

・過去にアナフィラキシーショックを起こしたり、てんかん発作や心臓神経症、パニック様症状、過呼吸、貧血、迷走神経脊髄反射などが原因でショック症状を起こしたり、失神したことがある。 (はい・いいえ)→(症状名:                 )

・多嚢胞性腎症、大動脈縮窄症、マルファン症候群、エーラースダンロス症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)など、脳動脈瘤や血栓症を合併しやすい病気にかかっている。 (はい・いいえ)→(診断名:                        )

・脳内出血(高血圧性脳内出血、クモ膜下出血)、脳梗塞、冠動脈性心疾患、一過性脳虚血発作、高血圧性脳症、肺塞栓などの血管障害を起こしたことがある。 (はい・いいえ)→(診断名:                       )

・敗血症、膠原病、紫斑病(シェーンラインヘノッホ病など)、壊血病、遺伝性出血性毛細血管拡張症(ランデュオスラーウェーバー病)、血小板減少症、再生不良性貧血、脾機能亢進、消費性凝固障害(DICなど)、フォンウィレブランド病、ビタミンK欠乏症など、血液凝固因子に異常がみられ、出血性素因や凝固活性化があると診断されたことがある。 (はい・いいえ)

・抗リン脂質抗体症候群(APS)、妊娠合併症、習慣性流産やピル等による血栓症を起こしたことがある。(はい・いいえ)

・現在、ピルなどの経口避妊薬を常用している。または妊娠中、妊娠している可能性がある。 (はい・いいえ)

・豊胸手術やその他の整形術、骨移植、臓器移植などに伴い、体内に人工物などを埋め込んでいる。また、脳血管障害や心疾患などによってステントを入れたり、静脈瘤手術で静脈を切除したり、人工肛門手術をしたことがある。 (はい・いいえ)

 

4:消毒薬の副作用によってアナフィラキシーショックを起こす可能性
刺鍼前に刺鍼部位を消毒しなければならないことは、あはき法第6条に「事前消毒の義務」として規定されている。日本では、「アルコールは冷えるから良くない」などと言って、これを尊守せずに刺鍼している鍼灸団体もあるが、ここでは消毒によって起こりうる医学的な常識について記す。皮膚消毒に用いる薬剤として最も抗菌スペクトルが広いのは、70%程度の濃度のアルコール(消毒用エタノール)であることは常識だ。しかし、消毒効果が高ければ高いほど生体へのダメージは強くなるため、医療現場ではアルコールに対するアレルギーがある患者に対しては、クロルヘキシジン(ヘキザックやヘキシジン)を使うことが推奨されている。また、ヨードに対するアレルギーがある患者も存在し、病院など医療機関での消毒薬の使い分けはもはや常識となっている。しかし驚いたことに、鍼灸学校では消毒に関する教授内容が様々らしく、卒業後もアルコール、ポピドンヨード、クロルヘキシジンの明確な使い分けを知らない鍼灸師が少なくないようだ。先に述べたように、病院ではアルコールがダメな患者にはヘキシジンなどと消毒薬の使い分けが常識となっているが、鍼灸院では知られていないことが多いそうだ。また、他の薬剤の知識に関しても、例えばアルコールといえども綿花を長期間漬け置きにしたり、薬剤を継ぎ足して使っていればセラチア菌が繁殖する可能性があることや、1枚ずつ包装されている使い切りのアルコール綿花が最も安全であることも、あまり知られていないらしい。さらに、ヨードが粘膜や傷口に使えることや、アルコールやヘキシジンの適切な濃度、粘膜や傷口、目や耳の周りなどへの使用が禁忌であることを明確に理解している鍼灸師も少ないらしい。ゆえに、このような基本的な消毒薬の知識を持ち合わせていない不勉強な鍼灸師や、施術前に消毒に関する必要な問診を行わない鍼灸師は、不適切な皮膚消毒によって事故を起こす可能性がある

 

5:危険三角域への不適切な刺鍼で急性髄膜炎を起こす可能性
次項で詳述します。

 
 
 

美容鍼で急性髄膜炎になる可能性

現在、日本で行われている美容鍼は顔面部への刺鍼が大半を占めるわけですが、体幹部同様、顔面部においても刺してはならない部位(禁鍼穴)が存在します。ちなみに、愚かな鍼灸師は古典にあるような禁鍼穴のみに囚われてしまうわけですが、実際は医学的、解剖学的観点に基づいた現代的禁鍼穴にこそ、注目しなければなりません。その中で最も気を付けなければならないのが、医学的に言う「危険三角域」です。おおよそ眉間を頂点、両口角を基点とした、眼頭と鼻部、上唇部をカバーするような領域です。
 
眼窩上下方・内側には頭部の深静脈が出入りしていますが、特に上眼静脈、下眼静脈は他の静脈に比べて太く弁がないため、顔面領域の細菌感染が脳の深部へと波及する経路になり得ます。つまり、この危険三角域への不適切な刺鍼によって、眼窩、鼻腔、顔面上部での感染が発現し、それに続発して起こる敗血症様の発熱や急性髄膜炎などが起こる可能性があるのです。例えば、上唇部や鼻部に出来た腫れ物などの化膿性炎症が起こると、それ由来する細菌が眼角静脈経由で海綿静脈洞(頭蓋腔)に侵入し、この静脈網に血栓症を引き起こすことがあります(鼻毛を抜いた穴から化膿性炎症、細菌感染を起こして死に至るなど。)。これは医学的には海綿静脈洞血栓症候群と呼ばれ、凝血塊が静脈を閉塞させる感染症の一つで、最悪は急性髄膜炎に発展します。急性髄膜炎においては、主に発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、痙攣、意識障害その他の精神症状が出現します。神経学的には項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候が認められ、さらに悪化すると脳神経障害や脳巣症状が発現します。
 
愚かな鍼灸師はこういう基本的な医学知識を知らずに美容鍼をするようですが、鍼が使い捨ての新品であったとしても、鍼灸師自身の手が不衛生であったり、施術部位の消毒を怠っていたりすると、容易に感染が起こり得ます。なぜなら、患者の皮膚に常在菌やその他の汚れに由来する細菌・ウイルスが存在することはもちろん、無菌室でない限り、浮遊菌、落下菌、付着菌など、そこら中に菌が存在しているからです。私は今まで鍼灸師が実際に施術する場面を多々みてきましたが、残念なことに、完璧に衛生管理が出来ていると思える鍼灸師に出会うことはありませんでした(鍼灸学校の教員においても、正しい衛生管理の理解と実践がなされていない場合が多いようである。)。患者は「ディスポ鍼を使っていれば安心だろう」などと考えているパターンが非常に多いですが、それ以前に基本的かつ法に定められた手指消毒すら徹底出来ていない鍼灸師が少なからず存在しているという事実が大問題なわけです
 
とにかく、顔の位置は脳と表裏関係にあり、顔面部への刺鍼が脳内の血管に悪影響を与える可能性がある、という事実を認識しておくべきです。しっかりとした知識に基づいたうえで顔面部に刺鍼するのであれば問題は起こりにくいでしょうが、現状では勉強不足であったり、衛生管理を徹底していない鍼灸師が多いという事実を踏まえた上で、美容鍼を受けるか否かを考えるのが賢明であると思います。世の中には自称ゴッドハンドとか、美容鍼の第一人者であるなどと自作自演的に騒いだり、メディアを過剰なくらいに利用して患者を貶めている鍼灸師が実在しますが、注意が必要です。
 
 
 
 

美容鍼のカラクリ

ここ数年、新宿や銀座、渋谷、目黒、吉祥寺、青山、自由が丘、岡山など、東京都内を中心に美容鍼なるモノが流行ってきました。そのほとんどの施術内容は、顔を中心に鍼を刺すだけで小顔や美顔になれるという触れ込みですが、本当にそのようなことが可能なのでしょうか。
 
まず、美容鍼の効果云々より、鍼治療本来の科学的効果について、しっかりとおさらいしてみましょう。まず、大きな特徴は
 
①ストレス鎮痛による効果(刺鍼で脳内麻薬のβ-エンドルフィン、ノルアドレナリンなどが放出される)「ストレス鎮痛とは」
②血流促進による筋肉弛緩効果(血行が良くなり、凝った筋肉が柔らかくなる)
③筋弛緩によるリラックス効果(筋肉がゆるむことで副交感神経が優位になる、脳波が安定する)
 
です。その他、免疫機能の向上など、色々な作用があると言われていますが、基本的な効果としては血流が改善し筋肉がゆるむこと美容専門鍼灸院が引き合いに出す「創傷治癒」については以下に詳述します)がメインです。このことを踏まえて考えてみると、美容鍼によって顔の血流が改善し、シワシワに乾燥していた肌に、若干なりともツヤやハリが出るのは納得出来ますが、リフトアップ効果があるかと言われると、疑問を抱かざるを得ません。なぜなら、「リフトアップ=表情筋の収縮・緊張」であり、「刺鍼=筋肉の弛緩(柔軟性UP)」であり、「顔への刺鍼=表情筋の弛緩≠リフトアップ」となるからです。まぁ刺鍼で皮膚の状態が良くなれば、微妙にハリが出てわずかにシワが減るようにみえることもあるが、刺鍼のみでクッキリと刻まれた法令線が消えることなどありえないでしょう。また、フラクショナルレーザーやダーマペンのように、切れの良い鍼を肌の凹部などへ1.5~2mm程度の深度で沢山刺鍼すれば、皮膚の凹みが完全に再生する可能性はありますが、鍼治療単独で麻酔なしではめちゃくちゃ痛いですし、レーザー治療やダーマペンほどの効果を得ることは困難でしょう。
 
しかし、実際顔に鍼を刺し、少し経ってから抜くと、とても顔がスッキリした感じを実感出来ます。刺鍼すると筋肉がゆるむはずなのに、なぜスカッとするのか?なぜ、術前・術後の写真では明らかにリフトアップしている様子が観られるのか?もしかして、あれは合成写真?それとも、パソコンソフトで修正しているの?いやいや、CGでしょ?まさか、双子?などと疑ってしまうかもしれませんが、あれは実際の写真だと思われます(中にはイ〇チキと思しき画像もある)。
 
では、なぜそう言い切れるのかと申しますと、刺鍼による筋肉の弛緩にはカラクリがありまして、それで簡単に説明出来るからです。つまり、「顔だけ美容鍼灸」のカラクリです。
 
先程も申し上げたように、刺鍼後は軸索反射や副交感神経の亢進によって、刺鍼前よりも筋肉がゆるみます。刺鍼することで滞っていた血流が改善され、血液を介して新鮮な酸素と栄養が、筋肉を始めとする諸組織に供給され、結果として筋肉が柔らかくなるわけです。ですので、鍼治療後の通常の反応としては、気だるい感じがあります。筋肉がゆるむので、身体がだら~んとなるのです。ま、脳内でβ-エンドルフィンが出ることも原因ですが。ちなみに、β-エンドルフィンはいわゆる脳内麻薬の一つで、鎮痛物質であると同時に、快楽物質でもあります。さらに、β-エンドルフィンはモルヒネの数倍~数十倍の鎮痛作用があるとも言われ、高揚感や幸福感などを伴うのは、経口摂取したり、皮下注射したり、吸引するドラッグと同じですね。また、β-エンドルフィンは快感を感じている時や、幸福な時にも放出される物質で、鍼灸治療後独特の浮遊感、疲労感は主にβ-エンドルフィンによるものです。
 
ちょっと、話が逸れてしまいましたが、確かに刺鍼後に筋肉は弛緩します。しかし、刺鍼は侵害刺激ゆえ、刺鍼直後は筋肉が収縮します。ややこしや~、ですね。例えてみると、刃物をズブッと刺された時の状態に等しいのです。え?刺されたことないからわからないって?では、今から説明しますので、想像してみて下さいね。
 
人は、動物も含め、刃物で刺されると一時的に防御反応が働いて、筋肉がグッと締まります。つまり、それ以上損傷部位を広げないように、ひどく出血しないように、生理的反応として刺された周辺の筋肉が、一時的に収縮するのです。そうしないと、痛みがひどくなりますし、出血多量で死ぬ可能性が高まります。しかし、しばらくすると、刺された場所から血がドクドクと流れ出してきます。刺された部位の筋肉は、一定時間を過ぎると、力が抜けるように弛緩してゆくからです。よって、刺された直後(受傷後)は、筋肉が強く収縮しており、筋肉の間を走行している神経が潰され(疎通が遮断され)、多量の脳内麻薬が放出されるので、痛みを感じにくいですが、しばらくすると筋肉がゆるみ出して神経の疎通が戻るので、痛みを感じるようになります(ちなみに力道山は、強靭な腹筋を備えていたため、刺されたあとすぐに傷口が塞がり、そのまま帰宅したらしい。だが、実際は腹腔内での出血は進行していたため、死に至った。)。つまり、「受傷直後=(;゜Д゜)ウッ!!」→「受傷後 (;´ ▽`)ヘナヘナ~。」となるのです。男性ならば、カミソリでアゴを切ってしまった時、受傷後しばらくは痛みを感じず、血が出ないことなどから、想像出来る話だと思います。
 
これでおわかりになるかと思いますが、刺鍼後の特徴はまず、「筋肉収縮(ちぢむ)のち弛緩(ゆるむ)」と「血管収縮のち拡張」が原則です。よって、顔への美容鍼施術は、「リフトアップのちブレイクダウン」が真相で、リフトアップが実感出来るのは、せいぜい刺鍼後数十分くらいだと思われます。一説によれば、置鍼後に筋肉が一時的に収縮している時間は10~20分くらいで、30分以上経つと、筋肉が弛緩し始めると言われています(当院ではこれを治療に応用しています)。実際、日鍼会会長であった木下晴都が1962年、27名の坐骨神経患者に行った実験(置鍼時間を10分、20分、30分群に分け、圧痛とラセーグ角度を検証)では、30分置鍼した患者において、もっとも筋弛緩がみられました(ちなみに、私の経験では35分くらいがベスト)。
 
つまり、リフトアップを実感させるための置鍼時間は20分以内にとどめるのが最良で、「ほら、どうですかぁ~(;・∀・)」とさりげなく声をかけ、患者さんに効果を実感させるためには、長時間の置鍼はタブーになります。ですから、商売上手な美容系鍼灸院は、美容鍼(美顔鍼)の時間を30分前後に設定して、施術時間10分+置鍼時間20分、とするわけですね…。
 
おぉ、恐っ(((((」;゚Д゚)」))))ガクガクブルブル
 
ちなみに、刺鍼中は筋肉が収縮するという反応を悪用して、ホームページのビフォア・アフターの写真にて刺鍼で小顔になった証明であるかのように大衆を欺いている輩もいるようですが、これは上記で述べた簡単なトリックによるものです。要するに、そのHPのアフターの写真をよく見ると鍼が刺さったままでして、アフターではなく施術中(刺鍼中)であるのに、「鍼でこんなに顔が小さくなりましたよ」と騙しているに等しいトリックを使う鍼灸師がいるのです鍼が顔に刺さっていれば、刺鍼中は反射で筋肉は縮んだままになりますから、そりゃ若干リフトアップしたり、小顔になったように見えるわけです。これはやり方がゲスいですし、フェアではないと私は思うわけであります。これはまた景品表示法違反であるとか、広告違反で消費者センターや消費者庁に通報されてもおかしくないレベルです。しかし、素人や役人はこの簡単なトリックがわからないため、スンナリと騙されてしまい、野放しになっているのが現状です。
 
確かに顔にむくみがあるような場合などは、頸や顔面部に刺鍼することで体液の流れが改善し、若干小顔に見えることもありますが、それならば、鍼を抜いた後の写真をアフター写真として掲示すべきでしょう。美容鍼灸関連のウェブサイトにはそういうアンフェアなやり方が少なくありません。
 
例えば、以下に述べるような酷いビフォア・アフター写真もあります。それは、顔の左側だけに刺鍼して、刺鍼していない顔の右側と比べるようなビフォア・アフター写真です。
 
そもそも、完全な左右対称顔を備える人間など皆無に等しく、顔の右側だけを反転後に合成したCG画像と、顔の左側だけを反転後に合成したCG画像が全く別人に見えるという事実は10年以上前から常識になっています。
 
ですから、顔の左右を比べる自体がインチキに等しいのです。つまり、眉や目の高さ、口角の上がり具合などは必ず僅かながらも左右差があるはずで、左側だけに刺鍼したとしても、右側との誤差を正確に計測することは不可能に近く、それ自体が馬鹿げており、かつ大衆を欺いているに等しいのです。
 
もし、顔の右側か左側だけを比較対象とし、例えば左側だけに刺鍼した前後の画像をビフォア・アフター写真として、画像を重ねて比較するならば、まだ公平性はあり、フェアであると言えます。しかし、顔の左右に歪みがある事実をHPの閲覧者に明示しないまま、先天的または後天的な顔の歪みがあるようなモデルを使えばビフォア・アフターのトリックは簡単に作れてしまうわけで、これこそは景品表示法違反に該当すると言えるかもしれません。私はこういったIQ低めの低俗トリックには騙されませんが、世の中にはコロリとだまされてしまう人も少なくないようです。
 
実際に、当院にもそういう写真に騙されたとか、内出血がひどかったとか、発熱したとか、顔面に異常感が残ったとか、全く変化がなかったとか美容針関係の相談の電話が来て迷惑なのと、泣き寝入りしている被害者が少なくないようで、可哀想なので、こういう事実を公開するに至りました。また、ヤ〇ー知恵袋などで美容鍼灸や針灸全般に関する質問が多々見られますが、自称鍼灸師の見るに堪えぬほど低レベルな回答が大半を占めているようで、そのような迷える羊的質問者への正しい助言としても、このページが役立つと考えています。
 
結論:「顔だけ美容鍼=一時的なリフトアップは可能」だと思われます。しかし、私個人としては科学的根拠に乏しい一部の美容鍼治療を受けるよりも、ちゃんとした美容専門の皮膚科で、科学的に効果が実証されているライムライト(フォトブライト)などの光治療や、YAGレーザー治療、ジェネシスレーザー治療、低濃度ピーリング治療、ハイドラフェイシャル治療、ダーマペン治療などを受けたりした方が遥かに効果があると思われます(その理由は以下に詳述しました)。
 
 
 

美容鍼での謳い文句を検証

では、以上の内容を踏まえつつ、巷(ちまた)の「顔だけ美容鍼灸院」で謳われている宣伝文句を列挙しつつ、その効果の真偽を検証してみましょう。
 
美肌効果→△
多くの鍼灸師が美容鍼の論拠として引き合いに出すのがいわゆる「創傷治癒」と呼ばれるモノである。要するに、鍼を皮膚に刺すことで意図的な傷を作り、その過程で繊維芽細胞を刺激してコラーゲンを生成しやすくさせる、という意図のモノであると思われる。つまり、皮膚を構成する線維芽細胞は刺激を受けると皮膚の再構築(コラーゲン生成)を促そうとするという医学的事実があるため、鍼で皮膚を傷つけることでキレイになる、という虎の威を藉る狐的売り文句なのであるが(こんな基本的な医学知識さえ知らずに漠然と美容鍼で悪銭稼いでいる鍼灸師も少なくないようだ)、結論から言えば実績豊富な美容専門の皮膚科でライムライト(フォトブライト)などの光治療や、YAGレーザー治療、ハイドラフェイシャル治療、ピーリング治療などを受けた方が遥かに効果は期待出来るであろうと思われる。実際に、レーザー治療では一回の照射で数千発ものレーザーを皮膚の深部へ放射することが可能で、レーザーで繊維芽細胞を刺激することによってコラーゲンが産生されやすくなり、2週間もすれば肌の違いを実感しやすい。また、ピーリング治療も濃度が適切であれば、10日ほどで効果が実感できる。しかし、例えば刃先の丸い日本製の鍼で、たかだか数十本~100本に満たないような刺激を皮膚に与えたところで、レーザーほどの効果が見込めるかを単純に考えたら、その答えは明白であろう。しかも、レーザー治療は安い皮膚科では1回13000円ほどで受けることが可能であるが、科学的根拠に乏しい美容鍼の一般的な相場は安くても1回あたり1万円前後で、自称ゴッドハンドの鍼灸師などでは1回60000円以上とられるそうだ。
 
現在日本で販売されている鍼は非常に精度が高く、品質が良いため、鍼の表面がいわば鏡面仕上げであり、ツルツルであるため、創傷治癒を目的に皮膚を傷つけるという点に関して言えば、かなりの無理がある(実際に最近は鍼尖が丸い、皮膚を傷つけにくく刺鍼時の痛みが少ない鍼が開発されている。また、直径0.18mm程度の細い鍼を数本~数十本程度しか刺さない鍼灸院が多いようであるから、1回の照射で数千発打ち込むフラクショナルレーザーやジェネシスレーザー治療に比べたら、美容鍼が繊維芽細胞に与える刺激はたかが知れている)。国内の鍼メイカーのスタンスは年々、「刺入時の痛みをいかにして減らし、かつ内出血を抑えるか」ということに比重が置かれていると推察されるため、これからも、より研磨傷が少なく、皮膚を傷つけにくいような鍼がどんどん増えてゆくかもしれない。近年ではシリコンオイルを塗布した、針尖が丸みを帯びた高級ディスポ鍼の人気が高いようである。
 
実際に、「最高級の鍼を使用しています」などと謳っている美容鍼専門鍼灸院の場合、基本的に日本で販売されているディスポ鍼に関して言えば、高級であればあるほどシリコンオイルが塗布されてたり、鍼尖が丸く加工されている確率が高く、製造精度もより高いため、皮膚を傷つけるという点に関してはより劣るの可能性が高い(つまり、高級鍼≒皮膚や筋肉へのダメージが少ない可能性が高い)。ゆえに、本当に創傷治癒による美容効果を引き合いに出しつつ、その効果を求め実証しようとするのであれば、中国で使われているような粗悪な作りの鍼を使った方が理論的には遥かに効果が高いはずなのである。しかし、中国の鍼は鍼の表面が粗いため(顕微鏡でみないとわからないレベル)、内出血が起こりやすく、顔に使うのは不適当である。また、刺鍼部位が瘢痕化する可能性もあり、とにもかくにも顔に中国鍼を使うことはリスクが大きい。
 
したがって、安全に効果のある美容鍼というのは、現在の多くの鍼灸院で使われている実際の針の形状や、医学的な根拠によって解するならば、理論上は存在し得ないのではないか要するに、美容鍼の根拠を創傷治癒に求めるならば、それに付随する内出血や瘢痕化のリスクは避けて通れないし、最も効果が期待出来そうな粗悪な中国鍼を顔に使うこと自体が危険だ。しかも、精巧に作られた日本鍼では創傷治癒は起こり難いと推察される。つまり、日本のいわゆる美容鍼は、鍼で皮膚を傷つけることで効果が得られるという理論なのに、皮膚をほとんど傷つけることが出来ない極細かつ鏡面な鍼を使っている場合が多いと思われる。一般的に美容鍼における創傷治癒とは、皮膚を傷つければ傷つけるほど効果が見込める、という理論であるが、高級な日本鍼を用いた、皮膚に強いダメージを与えられない美容鍼というのは理論的には効果が得難い、と考えられるゆえに、「当院の美容鍼は痛みを伴わずにキレイになれます」とか「髪の毛よりも細い鍼を使っているのでほぼ無痛です」とか「最高級のシリコンオイル付き日本鍼を使っているので安心です」などと嘯く鍼灸院には注意が必要である。
 
だいたい、怪しい鍼灸院のHPのビフォアアフターの写真なぞは、例えば、アフター写真でリフトアップしてますとか謳ってても、実際はモデルの口角が上がってたり、光の当て方が明らかに違うもの珍しくない。
 
ちなみに、外観(皮膚)の状態というのは内部(内臓とくに肝臓・腎臓・胃・小腸・大腸、リンパや血液などを含めた体液、精神、自律神経)の状態が如実に反映したものであり、顔の表面だけにチョコチョコ鍼を打っても根本的には何も変らないパターンが多い「内側からキレイ」にするように体鍼(体幹部への鍼)を併用したり、運動や食事、生活環境を改善しなければ、根本から美しくなることは不可能であると推察される。顔だけへの美容鍼で一時的に肌に艶やハリが出たとしても、すぐ元に戻ってしまうかもしれない。したがって、「顔だけ美容鍼専門鍼灸院」や、患者の生活環境等を鑑みずに高価な美容鍼ばかりをすすめる鍼灸院は、疑ったほうが良いかもしれない。ちなみに、乳酸菌やビフィズス菌が豊富なヨーグルトを常食したり、悪玉菌を増やしたり腸に害を及ぼすといわれている肉や乳製品、アルコール、カフェイン、薬物などの摂取を控えると、小腸や大腸の状態が改善されて免疫機能や排泄機能がUPし、美肌になりやすい(繊維質で小腸で消化され難い野菜や玄米は大腸まで届くので善玉菌のエサになる)。
 
*結論=全身治療を併用する美容鍼灸院ならば、それなりの効果は見込めるかもしれない。特に、中医学をベースにした真面目な鍼灸院ならば、まあ、効果は出やすいかも東洋医学をベースにしてます」などとのたまう鍼灸院は怪しいかもしれない。以下に詳述したように、「東洋医学」などという「医学」は本来存在しないに等しいからである。真に鍼灸師が学ぶべきは西洋医学と現代中医学、中国針灸学が中心であろう。
 

 
バストアップ効果→△
何よりも胸部(肺周辺)に刺鍼することで、気胸(肺に穴が空いて、酷いと死亡する可能性がある。刺鍼事故で最も多い)になる危険性がある。私がまとめた講習会の資料でも詳しく記しているが、腋窩(ワキの下)周辺部位は、皮下から肺への到達深度が最も浅く(80mm以下というデータもある)、気胸による死亡事故が最も多く報告されている部位である。上記にも記したように、刺鍼の最大の効果は筋肉を柔らかくすることであり、乳房を「寄せて、上げる」という効果は甚だ疑問である。まぁ、鍼を刺した場所は代謝が促進されるので、胸が引き締まったり、乳房の栄養状態が良くなって巨乳になる可能性はあるかも…(でも危険)。
*結論=死にたくない人は、中途半端な解剖学的知識しか持っていない不勉強な鍼灸師の治療を受けるのはやめるべきである。胸部への刺鍼はいつ事故が起こっても不思議ではない。胸部周辺に刺鍼する場合は、肋骨か胸骨、椎骨に鍼先を当てないと、鍼が肺に刺さって死亡する可能性がある。浅くしか刺してませんから、大丈夫ですよ。」などとうそぶく鍼灸師には要注意。例えば痩せ型の人だと、胸部の皮下約1cmには肺が迫っており、鍼を浅く刺したとしても呼吸による肋間筋の収縮で鍼が自然に沈みこむこともありえるし、ちょっとした体動の変化、何かがぶつかった、などで容易に鍼が肺へ達する。胸部でのパルス(低周波)鍼などは、気胸の危険性がさらに高まる。解剖学、生理学、過去の刺鍼事故のデータなどを独自にしっかりと研究し、勉強している鍼灸師ならば、胸部への刺鍼は無暗に行わないはずである(皮肉の深さに適当な長さの鍼や、短い皮内鍼や円皮鍼を用いるならば問題ない)。
 
 
美脚効果→◎
当然ながら顔鍼だけで美脚は不可能であるが、下半身への適切な刺鍼法によっては、明らかな効果がある。脚だけではなく、足の不快症状(冷え性、むくみ、かかとのカサつき、角質の硬化によるヒビ割れなど)も間接的には改善出来る。しかし、深部の筋肉(インナーマッスル)に刺鍼しなければ効果が無いに等しいので、短い鍼しか使わない鍼灸院では効果は見込め難いと思われる。基本的に「無痛鍼」「やさしい鍼」「痛くない鍼」などと宣伝している鍼灸院では、長くても1寸6分(48mm)、太くても5番(0.24mm)の鍼しか使わないケースが多いので要注意。ふくらはぎへの刺鍼ならば、2~3インチ前後の長さの鍼が必要(筋肉と脂肪の厚さを考えれば明白)である。でないと、深部からの「美脚」は望めない。ちなみに、ふくらはぎの筋肉を鍼でゆるめると、足先の冷えやむくみも無くなって、脚(足)がポカポカしたり、スッキリする。
*結論…しっかりと脚(足)に刺鍼すれば、確実な美脚効果がある。私は、水虫などには灸も併用するのだが、角質が厚い足の裏ならば灸痕が残らず、綺麗に治る(今は水虫への施術はしていません)。ちなみに、水虫は冷えている足(脚)の方に現れやすい。脚全体の筋肉が柔らかく血流が良好ならば、抵抗力(=免疫機能)も強いので、水虫に罹ることはほとんど無い。水虫が出来やすい人はとにかくも下腿部の筋肉を弛め、足への血流を改善する事が重要である(酷い水虫は病院へ行って下さい)。
 
リフトアップ効果→△
刺鍼後、約数十分(10~20分がピークと思われる。)の効果は見込めるが、それ以上持続するとは考えにくい(刺鍼後は刺鍼部位の代謝が促進されるので、顔の皮膚にハリが出たり、顔が少し痩せる可能性はある。)。なぜなら、鍼治療最大の効果は、筋弛緩効果(筋肉のコリをほぐす作用)、血管拡張による血流の改善効果(筋肉が弛めば血流は改善する。)、副交感神経の優位(リラックス効果→筋肉は弛み、柔らかくなる←引き締め・リフトアップ効果は、本来筋肉の緊張を意味し、刺鍼による科学的・生理的反応の真実と反する。)などだからである。上記に記したように、多くの美容鍼専門鍼灸院で施術時間(置鍼時間、鍼を置く時間)を15~20分に設定しているのには、カラクリがある。大脳生理学的には、一般的に置鍼時間が20分を経過するくらいから視床下部と刺鍼部位への相互伝達が安定し、筋肉がゆるみ出すことがわかっている(患者によっては、抜鍼後数時間、筋肉が刺鍼の反射で一時的に収縮し続けるケースもある。この場合は一時的かつ僅かな体温低下がみられることが多い。)。したがって、この理論上は「顔だけ美容鍼」でリフトアップ、シワのたるみ改善などを狙う場合は、20分以内に鍼を抜かなければならず、長時間の置鍼は筋肉をリラックスさせ、「小顔」というマジックは達成されなくなってしまうのである。このHPでは何度も述べているが、刺鍼刺激初期の10~20分くらいは、鍼は身体にとって侵害刺激であり、交感神経が先に優位になるため、筋肉が緊張し続ける。「顔だけ美容鍼」はこれを利用したものであると思われるが、刺鍼後は、鍼を抜いた後も自然に筋肉が弛み始めるので、美容鍼施術直後は「小顔」になった気がしても、1時間もすれば元の黙阿弥となる可能性が高い。なぜなら、筋肉を弛めることこそが本来の刺鍼効果であり、鍼灸治療が依る所以だからである。このことは、国家試験を通過した鍼灸師ならば誰でも知っているはずだが、刺鍼後の生体反応は「血管収縮のち弛緩」、「筋肉収縮のち弛緩」であり、リフトアップ効果やシワのたるみ改善効果が「持続しえない」可能性が高い(代謝促進効果でハリが続くことはある)。刺鍼による「小顔」効果は鍼の極々一時的な侵害刺激および微細な血流改善を利用したものであり、冷水で顔をパチャパチャしたり、冷凍庫で冷やしておいたアイスノンで顔を冷やした時の「引き締め効果=小顔効果」と大差があるのかを考えると、甚だ疑問である。顔だけ美容鍼」はまさに「美容マジック」であり、大衆を一時的に小躍りさせるだけの「商品」であるかもしれない。最近は、美容鍼が大々的に様々な雑誌やテレビ、ネットなど、メディアで多く取り上げられるため、その効果を盲信する女性陣も多いが、冷静に考えてから来院するか否かを考えてもらいたいものである。
*結論=「顔だけ美容鍼」には十分な注意が必要である。全身の状態を改善すべく、身体を内側から変化させ、体質改善を目論む「美容鍼」ならば安心かもしれない
 
デトックス効果→◎
顔だけへの刺鍼だと、全身的なデトックス効果はほとんど見込めない。体幹部・四肢・頭部への刺鍼なくして、鍼によるデトックス効果は無いと考えて良い。なぜなら、デトックス(毒出し)に最も重要な肝臓(いわば毒処理工場)、腎臓(不要な体液を尿に変える)、小腸(宿便がたまりやすい場所)、大腸(便通の最終地点)は自律神経で支配されており、自律神経のバランスをとるために、自律神経の始発点である、頸部・背部への刺鍼は欠かせないからである。
*結論=顔だけへの鍼で全身的なデトックスはありえない。よって、顔鍼専門の鍼灸院では「デトックス効果」ではなく、「プラシーボ効果(脳内麻薬放出による何らかの効果は出る)」のみが主であると思われる。だが、全身への刺鍼を併用すれば、確実な効果はある。デトックスにおいては、いわゆる宿便の処理、まずは便通を改善させる事が最重要であり、骨盤内外の筋群、小腸・大腸周辺の筋肉をゆるめるための刺鍼が欠かせない。
 
 
肌荒れ→△
内容としては、ほぼ①に順ずる通り。顔面部の肌荒れは、顔だけに原因があるのでは無いことが多い。免疫機能の不全による外的環境への順応性低下や、薬害などによる消化器や肝機能の低下、その他の内蔵病変、自律神経失調などが主な原因であるようだ。したがって、体幹部への刺鍼は必須皮膚の状態によっては、皮膚科でレーザーなどを当ててもらうとか、ピーリング治療を受けるだけでも大いに効果が出るケースもある。
*結論=上記①に同じ。
 
眼の下のクマ→△
戦時中の話だが、眼の下の膨らみの部分(人相術で言う「涙堂(るいどう)」の部位)に鍼を刺して尿にたんぱくを下ろし(蛋白尿)、徴兵を逃れたという話がある。この事からもわかるように、眼の下のクマは、主に腎臓に関連していると考えられ、腎臓の状態が良くならなければ、クマを完治させることは難しい(*人相術では「クマ」を陰徳の欠如、腹黒さ、下半身の冷え、生殖器の異常、子供の凶事などがあると観る)。これは、腎臓疾患、泌尿器系疾患、生殖器系疾患やそれらに関する部位に不調を有する者に、クマが必ず現れることからもわかる。また、下半身、特に抹消の血液循環が悪く、慢性的な冷えがある者にも、必ずクマがある(まぶたは皮膚が薄く、血流の影響が出やすい)。ゆえに、眼の周囲に刺鍼した場合、一時的な顔面部の血流改善・代謝促進等によるクマの消失はあり得るが、根本的な治療にはならないと言える。つまり、全身的な治療を施さなければ、またすぐにクマが出てしまう可能性が高い。しかし、実際の話をすれば、残念ながら慢性的なクマを鍼灸で取り除くのは難しい(首への刺鍼で顔全体のむくみやクマが消えるケースもある)。
*結論→リフトアップと起序は同じで、一時的な効果しかないと思われる。つまり、一時的な効果しかなければ、何度も定期的に鍼灸院に通わねばならないのである。お金が腐るほどあるセレブなら構わないだろうが、多くの大衆は確実にクマを治す、全身的・献身的な鍼灸治療を受けるべきである。このように、患者を単なる「客」としか考えていない鍼灸院の増加傾向は、由々しき問題である。なぜなら、「治療」とは本来、「治して自立させる」ことだからである。
 
 
 

美容鍼灸の実態

『内出血が起こりやすく、その影響が脳にまで及ぶ可能性がある。』
ウィ○ペディアには「ごくまれに小さいアザが残ることがあるが、そのまま放置しておけば数日で元の何もなかった状態に戻る。」と書かれているが、あれは嘘である。誰が書いたのか知らぬが、実践経験の無い「ペーパーアホ鍼灸師」か、治療経験の少ない「モグリ福造鍼灸師」が書いたのではないかと想像してしまう。実際、顔面部での内出血は、特に眼窩周辺(下まぶたで顕著)では、大きく現れることがしばしばある。まぁ、緑内症や極度の眼精疲労、飛蚊症などで球後(ツボの名前、不勉強な鍼灸師は知らない奇穴)に眼窩内刺鍼をしなければ「パンダ眼」になることはまれだが、とにかく下まぶたではチョコっと刺しただけでも内出血が起こりやすい(皮膚表面からは縦横無尽に走る毛細血管がみえないので避け難い)。顔面部も含め、人間の全身には、地球外周の2倍以上くらいの長さの毛細血管が縦横無尽に走行しているため、鍼治療での内出血を防ぐことは技量の如何に関係なく難しいのである。特に筋肉の状態が慢性的に悪く、鬱血が著しい部位へ刺鍼した場合には、その部位だけ大きく腫れたように内出血することも少なくない。確かにアザや内出血が原因の皮膚の腫脹は綺麗に元通りにはなるが、消えるまでに少なくとも10~20日程度は要するのが通常である。ウィキペ〇ィアに記してあるように、「数日(2,3日)で元に戻る」というのはありえない。筋肉のコリがひどく、血流が慢性的に悪い、代謝能力の低下した患者であれば、内出血が完全に消えるまでは3週間ほどかかる場合がほとんどだ。これは用いる鍼の太さが太いほど過度になりやすいが、特に刺鍼部位、刺鍼・抜鍼法の如何に影響されやすい。一般的には鍼治療で起こった内出血が完治・消失するまで、平均的には2週間と考えれば間違いない。これだから、ネット上の情報は信頼出来ない(このページもネットですが)。ちなみに、顔への刺鍼は瘢痕化やケロイド化の可能性もあるので粗雑な鍼灸師にはやらせぬ方が賢明。ちなみに、顔面部の静脈には弁が少ないため、血液が逆流しやすく、顔面の炎症が脳にまで波及する可能性がある(前述したとおり)、という事実を知る鍼灸師はほとんどいないだろう(血管に樹脂を注入して作製された頭部血管の標本を見ればよく理解出来る)。
 
『相場よりはるかに費用が高い』
善良かつ健全な鍼灸院であれば、1回60分の施術で4000~6000円前後が相場である。まあ、立地条件によっては、60分10000円前後は妥当かもしれない…。しかし、ただ顔に鍼をするだけの、労働力をほとんど要しないような美容鍼で1回3万とか6万円とか払わせるのは明らかに異常である。しかも効果がみられないならば、イ○チキ度250%である。回数券の執拗な購入を迫られたり、明らかに騙されたという証拠がつかめたら、最寄りの消費者生活センターに相談しましょう。
 
『あくまで慰安、治ることを期待するのはタブー』
あくまで、顔だけの効果を目的とした美容鍼灸。したがって、全身の状態を診ることは稀だ。
 
『化粧品や健康食品などの物品販売を強制される』
商業的鍼灸に偏りすぎた鍼灸院では、個室に誘い込んだ患者を、そう簡単には帰さないことがあるらしい。初診患者に回数券(10回分80000円以上など)の購入を強制したり、物品販売を無理強いする鍼灸院もあるそうだ。あな、恐ろし。ちなみに、当院でも回数券は用意しているが、長く治療期間を要するような患者さんにのみ、勧めることがある(買いたい人には勝手に買ってもらう)。当然の話だが、基本的に回数券は、自主的に買ってもらう。ちなみに当院では、首が悪い人に木枕の購入を勧めることはある(木枕は本当に効くから)。
 
『エステとセット、のパターン』
鍼灸が得意な鍼灸師は、純粋な鍼灸治療だけで食っていけるであろう。あれこれと様々な療術に手を出したり、物品販売などの多角経営に走るケースにおいては、鍼灸が不得手である、と観ることも出来る。ちなみに、法的にはレーザー治療は病院で行われる施術だけが合法。そういえば、美容鍼施術の前段階として顔にマッサージを施す鍼灸院もあるらしいが、あん摩指圧マッサージ師の免許を保持していない鍼灸師が「鍼灸」という屋号を掲げるだけでマッサージをすることは違法とされている。
 
 
『軽い気持ちで来院すれば、「死」の危険性も。』
不勉強な鍼灸師は時に大胆な施術に走るため、大きな危険を犯しやすい。特に、「バストアップ鍼」には要注意。ネットでは、まともな情報は拾えないと考え、自主的に防衛するのが賢い患者である。
 
『「効いた」ような気がする』
多くの美容鍼灸は「治療」がメインではない。ゆえに、一時的な快楽を提供しているケースが多いらしい。いわゆる「慰安鍼」。
 
『誇大広告が著しいパターン』
芸能人・有名人・モデル・女優は、決して美容鍼灸だけで美しくなったわけではない。例えばトップアイドルには専属のメイクアーティストらがついているし、エステに定期的に通ったり、みえないところでかなりの努力を続けて、あの美しさを維持しているはずである。また、事務所にとって彼らはいわば「商品」であるため、厳重な食生活管理を強いられたりするなど、生活の管理に関しては一般人の比では無い。また、「魅せる」プロとしての美の管理・美への執着心は、常人が及ばぬレヴェルに達している場合がほとんどである。ゆえに、美容鍼灸で有名人のように美しくなれます!」など喧伝する鍼灸院には注意がいる。常に人に観られることを生業(なりわい)とするモデルや女優などがその美しさを維持するため、追い立てられるように、涙ぐましい努力を陰で続けていることを忘れてはならぬ。「美容鍼灸であの美貌に近付けるかも…。」という感じの控えめな広告ならば、まだ信用出来るかも。
 
『「東洋医学」を前面に押し出す』
東洋医学とは何?「東洋医学に基づいた…」などと宣伝している鍼灸師に聞いてみよう。きっと答えられないはずである。なぜなら、日本の鍼灸学校では、いわゆる東洋医学を指していると思われる「中医学」を、中国の学校ほど専門的に教えていないからである。国家試験に受かることを主な目的とした鍼灸専門学校では、国家試験問題に出ること以外に時間を割く余裕が無いのと、厚生労働省から言われた通りのカリキュラムを強制されるため、中国のように「中医学」を学ぶための時間的余裕がほとんどない。ゆえに勉強熱心な者だけが「中医学」を独自に学び、不勉強な者は「東洋医学」だけで「中医学」を学んだつもりになりがちである。そもそも「東洋医学」というモノは、日本独自の医学でもなければ、中国医学ほどしっかりと体系化された内容のある医学ではないつまり、「医学」とは呼び難いのが現在の「東洋医学」であり、医学として西洋医学ほどしっかりと体系化されていないため、ちゃんと学ぶことは出来ないのが「東洋医学」である。実際は、中医学をツマミ食いしただけの不完全かつ不明瞭な医学」が「東洋医学」と言えるのであり、中医学や西洋医学と比べると、いわば、「ゴースト医学」「ペーパー医学」と言えるに等しい。したがって、「私は東洋医学を勉強しています。」とか、「当院は東洋医学に基づいた美容鍼灸を行っています。」などと、常に「東洋医学」をチラつかせる鍼灸師を私は信用しない。中医学などを勉強していて、それに基づいて治療していると言うなら多少は信用出来るが、「東洋医学」という「医学」は「有るようで無い存在」である。ゆえに、そもそも存在しないに等しいモノ(=「東洋医学」)を勉強するなんて不可能だし、ましてやそれを根拠に治療するなんて出来るはずがない。日本において鍼灸が論拠を求めるべきは現代中医学と最新の西洋医学であろう。現在では模倣が得意で世界中から非難される中国ではあるが、鍼灸においては日本が模倣者であり、中国は先駆者である。また、残念ながら美容鍼灸においても、現代西洋医学と中医学をベースにしている中国鍼灸の方が遥かに先を進んでいるのが現状である。中国では西洋医学と中医学が同時活用されているため、常に科学的なアプローチで鍼灸を行える環境にある。日本でも、「中医学に基づいた美容鍼灸」とか「西洋医学に基づいた美容鍼灸」と宣伝する鍼灸院ならば、「東洋医学に基づいた美容鍼灸」などと比べて、遥かに安心出来るかもしれない。とにかく「東洋医学」という言葉を多用する鍼灸師には疑ってかかるべし。ちなみに、私は「東洋医学」という言葉自体に胡散臭さを覚えるので、全く使わない。
 

 
『どこの美容鍼灸も同じ感じ?』
「顔だけ美容鍼灸」に技術の差は出にくい。あったとしても刺鍼・抜鍼、その他の手技の極々わずかな差だけ、である(素人では感じとれないくらいの差)。だいたい、顔鍼で使う鍼などは長さが1寸以内であり、刺入深度は深くても数mmだから、鍼管(刺鍼する道具)を使えば、パッと叩くだけで刺入は完了する。最近は鍼管を使わずに刺入できる鍼も商品化されている。下手をすれば、素人でもすぐに真似出来るくらいの技量しか要しないとも言えるかもしれない(と言っても、鍼治療には免許が必要です)。ちなみに、私は5インチくらいまでの鍼を多用するが、5インチともなれば、結構なテクニックがないと扱えない。まさに、鍼灸の道は一日にしてならず、という感じである。だが、顔へ刺鍼するだけの美容針ならば、一日あれば習得可能と思われる。確かに顔鍼にも注意事項はいくつかあるが頭鍼、体鍼と比べると、刺すだけなら至って簡単である。したがって、専修学校で一定の教習を受け、国家試験に現役合格した鍼灸師であれば、顔針における技術の優劣はつきにくいと思われる。しかしなぜ、「顔だけ美容鍼」で3000~60000円もの料金格差があるのかは、未だ都市伝説的に謎である。
 
 
 

結論

美容は美容専門の優秀な皮膚科医や巷のエステティシャンに任せ、鍼灸師は医者が治せぬ疼痛性疾患や難病の類の研究に特化すべきであると、個人的には考えております。アヤシイ技術で、「美容鍼の効果なんてはよくわからないけど、儲かるから止められんな」などと考えて、ひたすら悪銭を稼いでいるばかりの賊的鍼灸師には、必ずや往生要集的な世界が訪れるであろうと予想しております。
 
追記:最近は美容を目的に、素人が自宅で自分の顔に灸を据えることをススメているゴリッパな鍼灸師がいらっしゃるようですが、顔への施灸は医学的にみてもリスクが大きく、禁忌であるべきことは鍼灸師の常識であるはずです(棒灸などで輻射熱を利用して温めるならばリスクが低いが、直接皮膚に接着させる台座灸などであれば熱傷のリスクが高まる)。まぁ、灸によるリスクをしっかりと告知・明示したり、個別に指導しているならば、200万歩譲っても良いかもしれませんが、それをしないで、灸や医学的な知識もロクにない素人に自分で顔へ施灸させるというあたり、世の鍼灸師のア〇さ加減もついに来るとこまで来たか、という感じが致しました。
 
そもそも、灸の主な効果は温熱効果とタンパク変性を利用した免疫機能向上効果であって、もちろん顔に熱傷を負わせることは禁忌であるから、顔への施灸の目的は温熱効果のみになると考えられます。したがって、温熱効果だけを求めるのであれば、赤外線やスチームを当てることと大差ないですし、むしろ、後者の方が安全で、特に赤外線などはセラミック効果で深部まで熱が安全に届き、適切に使用するならば、美容にも効果が高いはずです。ゆえに美容鍼と同様、他に良い方法があるのに、何故にわざわざリスクを冒してまで顔に灸をすえる必要があるのか?単なる金儲け?などという疑念がわくのです。こういったことは、マトモな知識があれば、素人でも客観的に良否を判断出来ると思います。先日も某SNSにて「痛風は患部に刺絡する(特殊な鍼で瀉血する)と楽になる」などと、自信あり気にコメントしている鍼灸師がおりましたが、まだあんな前時代的な発言をする輩がいるのかと、いささか驚いたのでありました。だいたい瀉血に等しい刺絡自体が法的に極めて違法に近いですし、それを知っている鍼灸師は刺絡をやらないはずです。
 

(終)
 
 
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