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ゴキ君さよなら

 私がこの世で嫌いなモノを3つ挙げると、
 
①無知
②無分別
③ゴキブリ
 
注:D○N(どきゅ○)含む
 
である。以前、あるお笑い芸人が「家にゴキブリが1匹でも出ると引っ越す」と言っていたが、私も全く同感である。とにかく、小さい頃からゴキブリは苦手である。
 
 以前、ダ○キンで働いていた時は、昼間はサービスマスター(いわゆるお掃除専門)をやって、夜はターミニクス(害虫駆除専門)をやっていた。昼は何人かで1台の車に乗り合い現場へ向かうのだが、夜は1人で車を運転して、週に3日くらいのペースで取引先をまわっていた。
 
 害虫駆除も色々あるのだが、大体はゴキブリ、ネズミ、ショウジョウバエ、シロアリの駆除が中心になる。毎回22時くらいから、東京都下の多摩地域を中心に町田、調布、吉祥寺、八王子の取引先を主に1日5件前後まわって、夜中の3時くらい、誰もいない営業所に戻るのが常であった。夜からまわるのは理由があって、その当時(2004年頃)は大抵のお店が23時頃から閉店し始めるので、その頃合いを見計らって仕事に取りかかるのである。害虫駆除を行っていることをお客さんにみられて店のイメージダウンにつながらないように、との配慮もある。
 
 ダ○キンの害虫駆除は結構好評で取引先も多かった。したがって、1日でなるべく多くの取引先をまわるべく裏道を駆使したり、食事時間を削って仕事する毎日であった。サービスマスターとターミニクスの制服は異なるので、車の運転中や信号待ちの時に着替えることもよくあった。食事はコンビニでおにぎりやパンを買って、車の中でラジオを聴きながら頬張ることが多かった。時間がある時は東八道路にある○イヤルホストでマッタリと食べたりしていた。今では路上駐車の取り締まりが厳しくなってしまったが、当時は結構どこでも停めやすかったので助かった。今じゃ都内の繁華街などでは数分停めただけで、どこからともなく緑のおっさんが飛んでくるから、配送業の方などはさぞや大変だろうと思う。駐車場や駐輪場をろくに整備をせずに、取り締まりを厳しくするのもどうかと思うが。
 
 私が担当していた取引先は某カレー屋(ネズミ、ゴキブリ)、某焼き肉屋(茶羽ゴキブリ)、某スーパー銭湯(ゴキブリ、ネズミ)、某キャバクラ(ゴキブリ、ネズミ)、某ラーメン屋(ゴキブリ)、某ドーナツ屋(ゴキブリ、ショウジョウバエ)、某コーヒー屋(ゴキブリ)などであった。カレー屋はラーメン屋ほどではないが、厨房の床がヌルヌルしていて、膝をついて下回りを調べることが出来ないから非常にキツイ。ゴキブリはほとんどがシステムキッチン型厨房の冷蔵庫モーター部(電熱部)周辺かコンロの周辺に潜んでいて、2cm前後のうす暗く、暖かい隙間を好んで、寄り固まっている。
 
 ゴキブリが潜んでいると思われる怪しい場所を探り、マグライトでパッと照らす瞬間がいつも恐怖である。町田市にある某焼き肉屋は、1m四方のスペースに、数千はくだらないと思われる大軍がいて、ドン引きした。ほとんどの店はゴキブリがいても隠れているのだが、その店では床のあらゆる所でゴキブリが徘徊しており、しかもそんな状況で店員は事も無げに仕事をしているのであった。そこでは何回か駆除を試みて、一時的に半分以下に駆除したのだが、結局、強力なベイド剤にも耐性をもたれ、打つ手が無くなってしまったことを覚えている。とにかく、掃除の行き届いていない店や店員がゴキブリに対して何とも思っていないような店、鈍感な店員ばかりの店はどうにもならんと独り言ちていた。結果的に、その店は私が転職した折に上司に引き継いでもらったので、その後どうなったかは知らない。とにかくあの店には近寄らないようにしている。まだ営業しているのだろうか(*2012年正月にみたら、すでに閉店していた。)。
 
 若者に人気の街、K王線K駅にある某カレー屋(今は改装して綺麗になった)は、厨房の配管あたりに設計ミスだかで杜撰な施工痕があり、配管の隙間からネズミが出入りしていた。そこは比較的店内も清潔で、その穴を塞いでトリモチを仕掛けただけで、ネズミは出なくなった。あとは定期的にゴキブリが出ないように仕掛けるだけで良かったから、楽な仕事であった。
 
 K王線某駅からほど近い、某スーパー銭湯は厨房がとても広く、ネズミが出入りしている場所を特定するのが大変だった。結局、冷蔵庫の下の隙間から出入りしていたので、その周辺にトリモチを置いたら出なくなった。ネズミは結構学習能力が高く、大抵は先頭部隊のような役割のネズミが最初に出てくるから、そいつを殲滅してしまうとビビって(?)出て来なくなることが多い。スーパー銭湯は前の担当者のおかげでゴキブリはほとんどおらず、定期点検だけで楽だった。しかし、女性用の脱衣所には髪の毛がおぞましいほど落ちていたりして、別の意味で恐怖であった。
 
 K王K駅近くの某大型電気屋裏の路地にある某キャバクラは、ネズミの被害がひどく、店内もあまり綺麗ではないので、上司から無理矢理まわされた仕事であった。実際、何よりも上司が嫌がっていたのは、ヤ○ザがその店を経営しているということであった。とにかく、上司は害虫よりもヤ○ザの親分が怖いらしい。ゴキブリは毎度の定期点検で1匹も出ない状態だったが、キャバクラ嬢の更衣室兼メイクルームでのネズミ発見事件で、即刻駆除するように言い渡され、何とか2回で駆除に成功した。そのキャバクラは表向きは煌びやかだが、メイクルームはドン引きするほど汚かった。いくつものハイヒールが床に散乱し、お菓子の食べカスが散在しているのに、キャバ嬢達は一向に構わない感じで毎回メイクに勤しんでいた。衣装ケース下の、ネズミが食べたと思われるうまい棒のカスを頼りに出入り穴の場所を特定し、その穴を埋めることで、万事解決した。この店はいつも閉店する2時過ぎに行くのだが、竹内力のような親分がいない時は、子分たちが一所懸命キャバ嬢を口説いていたのを思い出す。とにかく、金払いは良く、いつも男気ある感じで「おう、ご苦労さん」と言って、1諭吉を差し出してくれるのであった。3500円の治療費を値切ったり、重症ゆえに1回で治るはずもないのに1回で治らなかったから次回は無料にしてくれなどと騒ぐ人に比べれば、彼らは遥かに潔い支払い方で、仕事も頑張ろうと思ったものだ。ちなみに、鍼灸の施術料金は他の療術と同様、あくまでも技術料なのだから、効果がなかろうが、刺鍼中に気分が悪くなって短時間で抜こうが、正規の料金は支払うべきで、その支払いを渋ったり、拒否しようとする人が稀に存在するが、やはり、そういう人は社会的評価もそれなりなんだろうと思う。
 
 ラーメン屋は取引先としては最も多かったが、とにかくどの店も厨房の床がヌルヌルと汚れていて、阿鼻叫喚の世界を醸し出す厨房も少なくなかった。そういう店に限って、ラーメンを「食べていきなよ」と勧めてくれるのだが、いつも丁重にお断りしていた。最近はラーメン屋もおしゃれになってきて、古民家を解体した廃材でレトロな雰囲気のカウンターを作っている店もあったが、とにかく、数cmの隙間をつくるだけでゴキブリの格好の住居となり得るので、注意が必要である。特に、カウンターに材木を使う場合などは、隙間が無いようにつなぎ合わせなくては危険である。ゴキブリに「住んで下さい」とお願いしているようなものだからである。また、店頭に砂利などを敷いてある店もあるが、この石と石の隙間もゴキブリの忌まわしき住居になりがちである。どこでも隙間は大凶である。
 
 K王線H駅にある某ドーナツ屋はダ○キンの系列会社なので、ほぼ全店で害虫駆除が定期的に行われている。したがって、清潔な店内を保っている店舗が多く、安心してドーナツを食べることができる店舗が多いようである。ドーナツ屋は店舗によってマチマチだが、業務終了後にドーナツをお土産にくれたりした。実はあまりドーナツは好きではなかったが…(ショートニングやその他の添加物の害が怖いから)。ちなみに、ダ〇キンで定期的に害虫駆除を行っている店舗には、大抵レジのあたりにその証明書が貼ってある。そういう店は、まぁ安心して食べる事が出来る。
 
 私が定期巡回していたコーヒー屋は、大抵はメニューも少なく、厨房も狭いので、害虫の被害も少なかった。K王線S駅や、C央線T駅にある有名なコーヒーショップのグループは、定期的にダ○キンの害虫駆除を入れていたので、店内も綺麗な店舗が多かった。たまにゴキブリ駆除のベイド剤をつけるだけで、ゴキブリが出ることは無かった。ダ○キンで害虫駆除をしている時は、この世からゴキブリを全滅させようと意気込んでいたが、今は退職してしまったが故、その野望も立ち消えになってしまった。
 
 とにかく、階下や近隣に飲食店があるマンションに住むのは恐ろしい。ゴキブリは暖かい場所や、食物の豊富な場所を好むからである。したがって、私は夏という季節もあまり好きではない。なぜならゴキブリが最凶に勢いつく季節だからである。そういえば、日本では著名な鍼灸師であらせられる某先生は、自著にてゴキブリに鍼を刺したことを自慢されていたが、本当に日本にはお気の毒な鍼灸師が多いものだと感心してしまった。だいたい衛生管理が第一の鍼灸業において、ウイルスや細菌の温床であるゴキブリなぞに鍼を刺す事態が異常であるし、そもそも人間相手の治療であるのに、哺乳類でもないゴキブリに鍼を刺すこと自体が無意味であると、私は感じるわけであります。私なら、もっと人間にとって有益で、実際の治療にフィードバック出来るような実験をすると思うが、貴重な時間を無益なゴキブリ刺鍼に割くとは、やはり日本鍼灸界で祀り上げられるようなそれなりの資質を備えられた存在なのであろう。とにかく、日本鍼灸界ではそういった鍼灸師が偉人として崇められる傾向にあるからどうにもならぬ。
 
それにそもそも、私そういう売名行為的かつ武勇伝的、自己満足的ドラマで鍼灸師としての地位を上げ底的に飾る輩を信用していないちなみに、生き物に気がつかれぬように鍼を刺すことを「生き物通し」と言い、水に浮かべた果物などに、揺らさずに鍼を刺すことを「浮き物通し」と言い、困難な手技であると言われているが、私は鍼灸学生時代に、「浮き物通し」を1回目で成功させた。
 
 ダ○キンは創業者、故S氏の精神が今も引き継がれていて、とても働きやすい会社だった。S氏は「祈りの経営」を掲げ、喜びのタネをまくことに生涯をささげたらしいが、今でもその社風が所々に残り、それを随所で感じとることが出来る。また、S氏は妙心寺派管長であった山田無文(←私が最も尊敬している禅僧)などにも帰依していたと聞いたことがあるが、人が嫌がるような事を自ら進んでやる、というのは物質文明に溺れた現代人には中々理解し難いかもしれない。最近は掃除機も使えぬ若者がいると聞くが、何でもかんでも人任せにして、金を払えばどうにでもなるという思想は危険である。これは治療においても当てはまることであり、自分の身体を痛めつけるだけ痛めつけて、あとは医者任せというのは考えものである。自分から能動的に治そうというモチベーションがないと、なかなか病気は治らないものだからである。
 

(完)